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□どちら、が
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窓の外からほとんど正面にある、そろそろ寿命なのかちかちかと点滅する安っぽいネオンの看板をぼんやりと見つめる。
薄いガラス一枚でも間に隔ててしまえば、遠くに時折走る車の音が聞こえる程度には防音が効くのか、側の電気が燃え尽きようとするあの独特の羽虫の飛ぶ音のような悲鳴は聞こえなかった。














         どちら、が






ここは神奈川。いつも通りの週末に、普段自分達の暮らす場所から少し離れて二人は華やぐ横浜の街に来ていた。
しかしこのそこそこには名の知れた都市でも眠らぬ東京ほど朝まで賑やかなわけではなく、夜が更けた今少し路地に入った先の寂れたホテルからではなおさら、静かな場所に感じられた。
薄い窓にぺたりと手のひらを触れさせてその冷たさにぼんやりと思考を奪われていだが、視界の端の変化に気付き仁王はゆっくりと振り向いた。ベッドの上に横になっていた柳生が起きあがったのがガラスに映ったのだ。




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