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□Sunshine After the Rainy Day
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予想以上の効果に流石に目をしばたいて固まっている跡部を、慈郎はくるりと振り返り視界に入れ、不意にその腕を掴んで強引に立たせ。
「せんせー、具合悪いんで跡部付き添いで保健室行ってきまーす」
完全に覚醒した声音でそう教壇に立つ教師に告げると、唖然とした周りに構うことなくずるずると跡部を引きずっていく。
「は?おい、ちょ、ジロー!?」
意味が分からないと完全に混乱していた跡部は何故か道連れにされそうな自分の状況について当然の抗議をするが、意外と力のある相手には効果もなくあっさりと教室の外へと連れ出されてしまった。





「…で、何なんだ。一体」
結局なすがままに連れてこられた先は屋上で、抜けるような青空の下に気持ちよさそうに寝転がる慈郎に跡部は呆れた口調で零す。
しかし長年の付き合いで返答がないだろう事を確信して一つ浅い溜息を吐いて脇のベンチに腰を掛けた。
頑丈な白いフェンスに指を添えて下を覗けば広い校庭で体育だろうかぱらぱらと広がる人影。しかしそこでどれだけ白熱した試合だ繰り広げられてようが、屋上からみればひたすらにのどかな光景だ。
日差しは暖かく春の陽気を感じさせ、薄く吹く柔らかな風は長袖のシャツの布地を緩くはためかせている。
こんなところにつれてきて、一体なにがしたいんだ?
いつもいつも自分を振り回す思考回路がまるで異なる生き物をそっと横目でみやり、そこでじっとこちらを見ていた赤茶色の瞳と目があった。
いつから見ていたのか、と一瞬体を強ばらせるとその瞳は閉じられた瞼の奥に消えた。にへら、と溶けそうな笑顔が浮かぶ。



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