DQ4

□こしゃくなレディ
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アリーナは無性に苛立っていた。
理由は分かっている。
恋人、クリフトだ。
彼は神官だから、神の御使いとして、誰に対しても公平に接さねばならない。
それはいい。

だが。

だからといって、一応恋人のアリーナに対してまでも公平でなくてもいいではないか。
せっかく世界も平和になって、一番クリフトが恐れていた「身分違いの恋」も、おおらかな父王や大臣たち、あとはアリーナたちの功績も強く働いて、拍子抜けするくらい簡単に認めてもらえたというのに。

だというのに、クリフトは、今だにアリーナへ臣下の礼を崩してはくれない。
アリーナだって、それがよそよそしいからやめて欲しいと、何度も彼に伝えた。
でも、彼の言葉は決まってこうだ。

「私は姫様の恋人などという恐れ多い立場の前に、臣下であり、ただの神官でございますから。」

アリーナも、初めはそんなものかなあと思っていた。
何せアリーナにとって、恋人というのはクリフトが初めての存在である。
エンドールで、モニカ姫とリック王子を見たが、二人は盛大な結婚式をあげている最中だったので、恋人たち、というのがどういう接し方をするのか、いまいちよく理解できてはいなかった。
だから、初めのうちはクリフトの言うことを鵜呑みにしていたアリーナだったが、噂好きな女官たちから、やれ「クリフト様とはもう御手をお繋ぎに?」だの、「お二人はどんな愛の御言葉を囁き合いますの?」だとか、しまいには、おおらか過ぎる父が、「おおアリーナ!そなたクリフトとキスくらいは済ませたか?何?まだ?純粋でそれも結構結構!」などと愉快そうに聞いてきたりすれば、さすがのアリーナも、自分とクリフトの関係がどうやらおかしいということに気がつく。

要するにクリフトはまだ覚悟ができておらんのですよ、と言ったのはブライ。
あやつの覚悟が決まるまで、そう急かされますな、と、諭されてはいるけれども、なんとなく納得がいかない。

そこでアリーナは一計を案じることにした。
自分より恋愛経験が豊富な女官たちにも協力してもらい、行方をくらますのだ。
そうすれば、いくらクリフトとて、血相を変えるだろうし、上手くいけば覚悟とやらも決まるかもしれない。

となると善は急げである。
あっという間に城中(ブライはやはり反対していてぶつくさ言っていたが)の協力体制が整い、アリーナは、その夜、姿をくらました。
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