Long Story

□プロローグ
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華葬

君に贈るための華を。






何にも変わらないごく平凡な日々。
事務的に、毎日を過ごす。

不満も何も、ない。

ただ、この世界に置ける物語の主人公ではない私は世界の歯車の一部でしかなくて。
時折それを歯がゆく思う。


そんな考えのせいだろうか、物語に惹かれるのは。
決して強い訳ではない話に飲み込まれるのは。


何となく手に取った物語は、私の歯車を少しずつ動かし、

全てを合致させてしまった。




仲の良い両親。その間に生まれた私。
いつもと同じ生活、何もかわらない。

「ふぅ…」

そんな生活にどこか見切りをつけてため息を零す。

私の好きな世界は画面の向こう。
私の好きな人は、画面の向こう。

エヴァンゲリオンという物語が私は大好きだ。
そして、渚カヲル…彼が好き。

色々な意味で叶わぬ恋。


「助けられたら、いいのにね」

そうやって零してベッドに倒れ込む。
彼のラストを思い出しては胸が締め付けられる。


瞼を閉じれば、ゆっくり意識が落ちていく。



意識が落ちきる前に何かが聞こえた気がした…。
それは優しい音色で、包まれるような感覚に陥る。


暖かい。

どこか安心する暖かさ。


少しの息苦しさと暖かさに完全に意識を手放す。



ゆっくりと夢の淵へと誘われる。



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