メモログ

□ネタログZ
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夜の話。
※やおい注意




あかりを落とした部屋の中、エックスが下から潤んだ瞳で見上げてきた。

「ゼロ‥‥お願いだ、もう‥‥」

オレは唇の端をニヤリとゆがめる。さてこれからじっくり楽しませてやろう、と思った矢先、
あいつの口から突然、場違いな定型文が飛び出した。

「This is X, go ahead.(ハイッ、こちらエックス)」

また、また、またか!!
オレは天井を仰いで額を押さえる。本部からの呼び出し通信だ。

「ええ、ハイ、いま出動します」

オレが身体を動かして退くあいだにも、エックスは連絡元と会話を交わし、おざなりにあちこちを拭い、戦闘用のアンダーウェアを着て、部屋の床に散らばったアーマーを拾い集めている。オレも一緒になってパーツを拾う。どうして、とエックスがつぶやいた。

「どうして見はからったように通信が入るのかなあ、こういうことしてるとさ」

「こういうこと」と言ったとき、エックスの頬が微かに赤らんだのをオレは見逃さなかった。目を逸らしたエックスにつられて、オレもあらぬほうへと視線をさまよわせる。盗聴かなにかだろうかと、エックスはしきりに首を傾げている。しかもおればっかり、と言って尖らせた唇は、まるで外見年齢そのままだ。

「おい、口動かしてないで手動かせ。緊急事態なんだろう」

だいたい盗聴なんぞとバカらしい。オレたちの身体そのものが、超・強力な電波探知機みたいなものだ。身体だろうが、部屋だろうが、怪しいものが仕掛けられていれば一発でわかる。

だが「おればっかり」という、そっちの原因は何だろう。オレもエックスも、同等同格のベテランハンターだ。自分のほうに仕事が回ってきてもおかしくない。
一瞬首を傾げたが、──あ、わかったぞ。

「お前は通信を切らないが、オレは切ってるからさ」

エックスはどんなときでも通信を切らない。いっぽうオレは、全館放送級の事件でも無いかぎり、非番のときは通信を切っている。
その理由を、オレは、自分に出せるいちばん優しい声でエックスに告げてやった。なぜなら、

「何よりも大切なお前と二人きりの時間を、誰にも邪魔されたくないからな」

ふ、キマッた。これであいつも少しはオレに惚れ直したかもしれない。
そう思って目を上げたら、エックスはもう部屋にいなかった。バシュッバシュッと金属的なダッシュ音が廊下を遠ざかっていく。せっかくの口説き文句も、宙に霧散しただけだった。くそ。

「まあいい」

べつに、これから金輪際あいつを口説いちゃいけないというわけじゃない。
あとでいくらでも、ゆっくりじっくりと聞かせてやるさ。
オレは負け惜しみに肩をすくめると、エックスのかわりにクッションを抱え、恒例の独り寝を決め込むことにしたのであった‥‥



  ◇



‥‥と、ふと気づく。

あいつを援護に呼ぼうかというほどのイレギュラー発生に、オレが出て悪いという法はない。
ソファからパッと飛び起きる。立ちふさがる「問題」は、早く片づけてしまえばよいのだ。
見てろ、イレギュラーめ。

「オレたちの邪魔をした代償は、高くつくぜ」

本部通信全開。傍らのZセイバーをひっつかむ。
窓をあけ、金の髪をなびかせて、夜の空へと身を躍らせた。


END





Ζ「エックス、お前のために宿舎の窓から飛びだして来たんだ」
Χ「えーっ、ちゃんとカギ締めて来たよな?!」




MI1018

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