◆「江戸の華」とエックスについて
火事ではなく喧嘩の話。 喧嘩するほど仲が良い。萌。
エックスとゼロ、といったら、喧嘩は一度はやっておきたい(?)シチュエーション三本指だと思う。 最初は些細な言い争いなんだけど、だんだんヒートアップしてきて引っ込みがつかなくなってくる二人‥とかベタで好きすぎる。
あげくつかみ合いになって、とうとう本格的に決闘することになっちゃう。 にらみ合いながら訓練場に向かうエックスとゼロ。 (部屋で決闘したらベースが吹っ飛ぶので)
一番広いドームの中で対峙するふたり。
「医務室送りにしてあげるよ、ゼロ」
「おもしれぇ、やってみやがれ」
バシュッッ!
ブースターでダッシュジャンプするエックス。同じく一気に距離をつめるゼロ。その間わずかコンマ秒単位。
◆ ◇ ◆
ものすごい形相をしたS級ハンターが使用申請をしていったので、訓練場のオペレーターさんは何事かと思ってびっくり。 当然うわさはあっという間に広がります。
「おい聞いたか!『あの』エックスとゼロの訓練だってー!!」
「やべえ、見に行かなきゃ!」
「なんだなんだ」
「マジで?!」
うわさは末端の新米ハンターや訓練生にまで広がり、いつの間にやらドームのギャラリイは野次馬だらけ。 その間もエックスとゼロはガンガンぶつかり続けてます。 ちなみにアーマー装着した状態で素手で戦ってます。 (訓練場でバスターやセイバーなどの得物を使うと、自動的に出力調整がかかるのでつまらない/自分設定)
ゼロは何と言っても、拳と鉄パイプだけであのシグマ隊長と互角に戦うだけの能力があります(X4ゲームのアニメ)。接近戦はお手のもの。 エックスも負けてません。小柄さと軽量さを生かしてゼロの拳をひょいひょい避け、壁蹴りと空中ダッシュを繰り返してゼロを翻弄。
野次馬も最初は面白がって見物してるんだけど、だんだん様子がおかしいことに気づき始める。 あんなに大事にしていたはずのゼロの髪束を丸ごと引き抜いて投げ棄てるエックス。エックスが鼻オイル(鼻血)吹いてるのに殴るのを止めないゼロ。 で、美しい戦いぶりとか何のことですか、と言わんばかりにエックスが自分の胸倉を掴んでるゼロの手を歯で食いちぎろうとしたり、さらには自分の手に噛み付かせたままゼロがエックスの頭を地面に叩きつけたあたりで不安は決定的に。
「ええええ?!」
「だ、大丈夫なのかあれ」
「なんか殺気[イレギュラー]入ってないか?」
「おいちょっと、止めに入ったほうが‥」
皆がざわつくけど、あの中に入っていく勇気のある人は誰もいない。 そうこうしているうちにも、エックスがゼロを引き倒してガンガン踏みつけたりしてる。
そんなとき折よくアクセルあたりが任務から帰還して、事情を聞いてびっくり。
「ええっ、エックスとゼロが大喧嘩?! どうして誰も止めなかったのさ!」
慌てて訓練場に走っていくアクセル。 と、前方からこちらに向かって歩いてくるのは‥‥
「エックス!?うわ、どしたのその恰好!!」
ボッロボロのエックスが、さらにボロボロのゼロを引きずってドームから出てくるところでした。 エックスのメットにはひびが入ってるし、ゼロのアーマーはかろうじて肩のところで引っ掛かってるだけ(先刻勝負がついたときにエックスが叩き割ったのだ)。 エックスは鼻オイルを流したまま、
「アクセル、任務後のメンテも受けずにウロウロしてちゃ駄目じゃないか」
いや、あんたらこそ人にメンテとか言えた義理かよ。とアクセルと遠巻きに見てた野次馬の誰もが思ったのですが、怖くて言えません。
「‥‥‥」
「おれはこれからゼロを医務室[メンテナンス]に運ぶ。アクセル、悪いんだけどゼロの髪を回収しといてくれないか」
「か、髪ぃ?」
「そのへんに転がってるはずだから」
「‥‥‥」
アクセル絶句。意識不鮮明なゼロを引きずりながら歩いていってしまうエックス。
「いったいなんなんだよー!!」
◆ ◇ ◆
その後エックスは、修理が済んだあと、ライフセーバーやシグナスにコッテリ搾られます。 黙してお叱りを受けるエックス。
ゼロはまだ検査中。 もともとゼロのシステムにはブラックボックスが多いのでなおさら検査が長引いてる。 それに、エックスはゼロの素体には傷をつけなかったけど、手加減していたわけでもないので。
結局エックスが一言も弁明しなかったので、喧嘩なのか何なのか、事の真相はわからずじまい。 シグナスは仕方なく、翌日以降の任務に響くようなことはするな、と言って話を切り上げる。
後日、アクセルはエックスに喧嘩の理由を訊ねます。
「ねえ、どうしてあんなことしたの」
「ああ、よごしたくなかったから、早めに離れた場所に置いとこうと思って」
「いや、髪じゃなく。どうして喧嘩したのか、理由が知りたいの」
何にもなくて、あんなに派手にやり合うわけないでしょ。 エックスはまだ言い渋ってるんだけど、アクセルに覗き込まれてしぶしぶ話し出す。
「えーと、ゼロが、メンテに行かないって言ったから」
「うんうん、それで?」
「それだけ」 至って真剣に答えるエックス。
「‥‥‥」
ハンターベースは今日も平和(?)です。
◆ ◇ ◆
でも、エックスにとってゼロが壊れることは、この世の何よりも恐れていることだと思うんですよ。 ただでさえゼロは任務のためなら腕の1〜2本飛んでも構わないというような捨て身の戦いぶりだし、実際何度も大破している。しかも覚醒すれば最凶のイレギュラー、という爆弾を抱えているくせに、精神システムのチェックやボディのこまめなメンテナンスは大嫌い。(←メンテ嫌いは同人設定?) ともかくエックスにしてみれば本当に気が気じゃないと思う。
でもゼロにしてみればブラックボックスだらけの身体をいじくられたり、何度やってもシステムにエラーや微細な異常反応が出るのを見るのはうんざり、というのも頷ける。 かくしてふたりの話し合いはいつも平行線。しびれを切らしたエックスが、とうとう自分で「ちょっとばかり」ゼロを壊して、問答無用で医務室に投げ込んだというわけです。どこがちょっとなんだろう。
一旦こうと決めたら容赦がない。そして、そういうふうに育てたのは他でもないゼロその人。
でも、いちばんすごいのは、X5ゲームの零空間(ゼロ使用時)、ゼロを連れ戻すために立ちはだかる公式エックスさんだと思う。
以下すべて公式設定&盛大なX5ネタバレ。少し死ネタ注意。
◆ ◇ ◆
たった一人でウイルス空間の調査に赴くゼロ。ただならぬ危険を感じ取ったエックスは、ゼロを止めようとひそかに後を追う。 エックスはゼロに検査を受けさせようとするが、ゼロは拒絶。
どんなことをしてでも連れて帰ると宣言するエックスに、
Ζ ・・・俺とやりあってまでつれて帰るのか?
エックス、お前は俺と戦えやしない
お前の優しさでもあり、弱さでもある
・・・俺なら大丈夫だ 信用してくれ
▽
Χ ゼロ、君にいなくなってもらいたくないんだ
ゼロ・・・本当に心配だから・・・
・・・本当に信用してるから・・・
ここで、君と戦って連れてかえる!!
この後エックスは、ゼロのいう優しさも弱さも無理やり押しやって、持てる武器を駆使してゼロと激闘を繰り広げることになります。このときのエックスの心情を思うと‥‥胸に迫るものが。
そして、ゼロはそんなエックスをふりきって、自らの死へと突き進んでいく。
幸薄いふたりに乾杯。
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