冠を抱きし者
□序章
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――序章――
影の季節、翡翠の月、一の週のある朝のこと
病に伏していた母が亡くなった
悲しみを乗り越えた時には、瑪瑙の月も過ぎ、瑠璃の月になっていた
瑠璃の月、一の週、一の日
僕は何も言わず、書置きも残さずに村を出た
旅をしているといつの間にか玻璃の月になり
僕は目的地の王都に着いた
そして、王都で暮らし始めて一月、王都での生活に慣れ始めたころ
新しい年の光の季節、蘇芳の月を迎えた。
そして、それは同時に僕が数え年で十五歳になった事を
子供でいられるが今年で最後だという事を
僕に教えてくれた
この時、僕はまだ何も知らなかった
そう本当に何も
今まで僕の中で普通だと思っていた事が覆されることも
そして母が何者であったのかも知らなかった
まして、僕自身が何者なのかさえも知らなかったのだから
それは当然だったのかもしれない。
―今ではもう母の死それが始まりだったのか
僕の誕生が始まりだったのか判らないけど
そこからすべては始まったのだ―
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