冠を抱きし者

□三章
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朝、僕は早い時間に目が覚めた。
昨日の夜これから僕はどうなってしまうんだろう?
殺されてしまうのかな?そんな事を考えながら寝たせいか嫌な夢を見てしまったからだ。

朝ご飯を食べた後、斜めがけのかばんに母の形見の鏡と母から渡された守護の短剣
それから昨日、大神官様に渡された木札をいれて神殿に行くことにした。

「行ってきます。」

「はい、いってらっしゃい。これはお小遣いだよ。」
おばさんはそう言って僕に銅貨を2枚―2ラマート―渡してくれた。
僕はそれを財布にしている巾着にいれ、ありがとう。とお礼を言うと

「別にお礼なんかいいよ。早く帰っておいでよ。」
そうおばさんは笑顔で言った。
僕はそれにうん。と返事をしたけど心ではおばさんに謝っていた。
ごめんなさい。僕は多分、もうここには帰ってこられない。
だからおばさん、今まで本当にありがとう、さようなら。と。

家を出てしばらくは通りをふらふらと歩いていた。
そして途中で買ったラカの実を食べ終わると

「…神殿に行かなきゃ。」
そうつぶやいた。だけど、しばらくは動けなかった。
この通りを忘れないように、お店の人たちを、おばさんを忘れないように
じっと通りを眺め、目に焼き付けてから神殿に行った。






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