冠を抱きし者

□四章
1ページ/5ページ



僕とバトラさんの二人が乗った馬車が動き出してしばらくすると、バトラさんに話しかけられた。
バトラさんの声は落ち着いていて、人を安心させる響きがあった。

「クラウ様、少しよろしいでしょうか?」
聞かれ、それに笑顔で

「いいですよ」
と、答えると

「では、差し出がましいかもしれませんが。
クラウ様、王宮では突然現れた貴方に対して快い感情を持たない者も多くいるでしょう。
ですが、どうか気を落とさないでください。
少なくともリヴァ様は貴方が王宮に来られるのを楽しみしておられますよ。
貴方と仲良くなりたいと申しておられましたから」
始めに言われたことは何となく予想できていた。
だけど、リヴァ様が僕と仲良くしたいと言っていた、という言葉に驚いて

「リヴァ様が、僕と?」
思わず声に出すと、バトラさんはひとつうなずいて言った。

「ええ。昨日、ダルク陛下からクラウ様のお話をお聞きになられたとき、
リヴァ様は嬉しそうにしておられました、新しい友達ができる、と。
陛下のご子息であられますフィアン殿下も貴方に興味を示しておられましたよ」
いきなり現れた僕は歓迎されていないだろう、と思っていた。

特にリヴァ様たちには。
そう思っていたから、バトラさんの話を聞いて少し気が楽になった。
それは本当に少しだけだったけれど。

「仲良くなれるといいなぁ」
今まで友達っていたことないから、バトラさんに言うわけでなく小さくそうつぶやくと、
目の前にいたバトラさんの顔が少し強張った。
だけどそれはすぐに元の表情に戻っていた。
そのあとは特に何を話すでもなく、僕は外を眺めていた。

眺めていると王宮に近づくにつれて人が多くなっていくのがよくわかった。







.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ