冠を抱きし者

□三章
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「……着いちゃった。」
小さな声で言ってかばんの中から木札を取り出した。

「これを、神官に見せればいいんだよね?」
でも誰に見せよう?
そうつぶやきながらウロウロしていると

「何を入り口でウロウロしている…」
と、呆れたように声をかけられた。
声のした方を向くとそこには昨日の大神官補佐の人がいた。

「えっと…昨日の補佐の人?」
とりあえず訊くと、そうだ。と返ってきた

「案内してくれる、の?」
続けてそう尋ねると頷かれた。

「ああ、案内しよう。ついてこい。」
それとその木札は手に持っていろ。と言われた。
木札には革の紐が通されていたから腕を通しておくことにした。
神官はそれを確認すると歩き出したのでそれについていった。

昨日も思ったことだけど、神殿の中の通路は複雑だ。
神殿の中は聖域だから悪しき者達、悪霊や妖霊が入ってこないように複雑にしているのだ、と前に母が教えてくれた。
特に大神殿の通路は複雑になっている。と言っていた。

母は本当にいろいろな事を知っていた。
何故なんだろう?と考えているうちに着いたのか神官が歩きを止めた。

「ここだ。」
そう僕に言って扉をたたき

「ゼセア様、クラウを連れてきました。」
神官が扉越しに声をかけると中から返事が返ってきた。入ってきていいですよ。と。
それを聞くと神官は扉を開け僕を中に入れてくれた。


「失礼します。」
そう断ってから部屋に入ると、大神官様は優しい笑顔で僕に座り心地の良さそうな椅子をすすめてくれた。

「どうぞ、そちらにお座りください。」
と。僕はその言葉にありがたく椅子に座らせてもらうことにした。
椅子に座ると改めて、どうなってしまうんだろう?という不安が強くなった。
それが顔に出ていたのだろう、。

「そんなに緊張なさらなくて大丈夫ですよ。」
大神官様に優しい声で苦笑交じりにそう言われた。
だけど、そうは言われても僕には緊張しないでいる事は出来なかった。
何かお聞きになりたいことはありますか?そう聞かれ、僕は不安に思っていることを聞くことにした。





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