他三国志書

□GWの前に
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だらだらとなかなか終わらなかった生徒会がようやく終わっり、校門を出た頃には時計の針が七時を少し過ぎていて曹操はため息を吐いた。
「孟徳!」
「惇、どうした?帰ったのではなかったのか?」
先に帰ったとばかり思っていた夏侯惇が校門に寄りかかっていたことに目を丸くし、曹操は近づいた。
「一度帰ったのだが、家には入れなくて……泊めてくれないか?」
「何かあったのか?」
まさか、火事や事件などの大変なことが起きたのではと、眉間にしわを寄せる曹操に、夏侯惇は顔を少し赤らめ、
「か、鍵を忘れてな……。今日から両親は四泊五日のグアム旅行で、淵は一週間、弓道部の強化合宿で居ないというのに……。バカ、だよなぁ――」
もはや、笑うしかないらしく、夏侯惇は自嘲しながら、曹操にことの詳細を伝えた。
安堵したと同時に、曹操は呆気にとられる。
「お主……どこか抜けているとは思っていたが、そこまでとは……」
「う、すまん」
「よい。どうせ、このゴールデンウィーク、一人暇だったからのう。始終、愛するお主と二人過ごすなんて、これほどよい機会はない!」
「え、お前の親と爺さんは……」
「沖縄で、野生の山猫の写真を撮ると言っておったぞ。二週間前」
曹操の親も祖父も写真家で、有名なとんでもない変わり者。どんな事であっても、有言実行しないと帰ってこない。
「え、この間、戦地に行ったばかりじゃないか」
「うむ。言葉通り、テロを背負い投げする写真をきっちり収めて帰ってきたぞ」
「……ああ、戦乱もな。大ニュースになって、とんでもないとばっちりを受けたわ」
連日連夜続いたマスコミの押し掛けを思い出し、夏侯惇は身を震わせる。
騒がしいマスコミのせいで、近所から苦情は受ける、寝不足になるで、いっそ親戚の縁を切ってやろうかと夏侯家の家族会議で決定しかけたほどだ。
特に、曹操とは。
「あれはお前のせいだ」
「まさか、本気にするとは思わなんだぞ。テロを背負い投げして、山積みにしたら、さぞやおもしろい写真が撮れるだろうと、言っただけじゃ」
それを真に受ける方がわるいと、曹操は笑いながら夏侯惇に答えた。
確かに、その通りではあるが、言う方もわるいような気がして、夏侯惇はキッと曹操をにらんだ。
「そう睨むでない。行くぞ、惇」
「あ、ああ」
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