他三国志書

□コスプレしてみよう!
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 選挙カーが会社の前を通る。
 うるさいその音が、中の音を完全にかき消され、何でも屋曹魏、社長室の音は、事務室内にはまったく聞こえなかった。
 だから、事務室の引っ越しの仕事に向かう司馬懿や曹仁達は、社長はおとなしく夏侯惇に見張られ書類作成をしていることだろうと、思い込んでいた。
 だから、社長が夏侯惇を押さえ込んで、夏侯惇を脱がせようとしているのだと、誰も気付かずに、彼らは仕事に向かった。




「ん〜!はっ」
 ガタンッ、と向こうの扉が閉まる音が聞こえ、曹操は唇で塞いでいた夏侯惇の唇を離した。
 仕事机に押しつけながら、器用に夏侯惇の服を脱がしていく曹操を夏侯惇は睨む。
 本来なら、抵抗したいところだが、先程の口付けで力が入らず、手は後ろにネクタイで結ばれ、塞がれていた。
「そんな顔で睨んでも、全然恐くないぞ。元譲」
 厭らしい笑みを浮かべ、曹操は現われた鎖骨にキスをする。
 ぴくりと震えた夏侯惇の身体を嬉しそうに見つめ、ベルトを緩め、下着共々スラックスを脱がした。
「〜〜!」
 声にならない声を上げ、夏侯惇は顔を真っ赤に染め上げる。
「よいのぅ。お主のここを見たのは、学生時代以来じゃ」
「う、うるさい!」
 下半身を舐めまわすような視線で見つめられ、夏侯惇は怒鳴った。
 そんな視線など気にせず、曹操は机の横にあった紙袋を取ると、にやりと笑みを深くした。
 その表情に、夏侯惇は学生時代の実体験による学習から、口元を引きつらせた。




 ぐったりと、女性のように足を揃え、手を床について、夏侯惇はため息を吐いた。
 その様子を、カメラ片手に喜色満面で曹操は眺めた。
「いいのぅ、いいのぅ!当時のセーラーもよかったが、今の格好もよいのう!」
 カシャカシャとシャッターをきり、嬉々として曹操は口にした。
 そんなとても楽しそうな曹操を見て、夏侯惇は遠い目をして、再度ため息を吐いた。
 夏侯惇の今の格好は、薄ピンクのスーツ、真っ白なブラウス、髪は結わえられ、丈の短いスカートからのぞく女物の下着、すらっとした足にはストッキングと、まるでOLのような格好を無理矢理させられた。
 今の鬱な表情さえ、そそられ、曹操は舌なめずりをした。
「くくっ、よいなぁ、その顔、襲いたいくらいじゃ」
「もう襲って、こんなもの着せただろうが……」
 半ば自棄気味の夏侯惇の言葉を聞きながら、曹操は時計を見た。
 時刻は一時過ぎ、仕事に向かったもの達が帰ってくるまで、あまり時間が無い。
「うぅ〜む、お主が暴れたせいで、あまり時間が無いのう。本当ならお主を抱くつもりじゃったが……」
「こんな格好させられて、暴れんやつはおらん!」
 曹操の発言に頬を染め、夏侯惇は怒鳴る。
「何照れておる。初やつめ」
「照れてない、怒っているのだ」
 視線を鋭くし、睨む夏侯惇だが、曹操には効かない。
 それどころかますます嬉しそうな笑みを浮かべ、カメラを机に置いた。
「しかたないの、サービスしてくれたら服を返そう」
 そんなに怒るなら仕方ない、とばかりに、そう口にして、曹操は机に座った。
 ふざけるなと怒鳴りたい気持ちを必死に押さえ、夏侯惇は思案する。
 もし怒鳴って、返してもらえず、皆にこの恥ずかしい姿を曝し、しかもその後曹操にお持ち帰りされるなど、絶対に避けたい。
 昔の曹操を熟知している夏侯惇には、容易くそれが分かった。
「孟徳、服を返して?」
 自分自身が気持ち悪いと思いつつ、膝をつき曹操の腰に手を回し、上目遣いで見上げ、なるべく可愛くねだった。
「う〜む、どうしようかのう。可愛い元譲ちゃんの願いじゃが、秘書なのに社長にする言葉じゃとは思えぬし……」
 にやにやと厭らしい笑みを浮かべる曹操を殴りたい衝動を必死に耐え、夏侯惇は深呼吸をすると、
「社長、返してください……」
「色気が無いのう」
「俺に色気を求めるな!」
 青筋を浮かべ、下から夏侯惇は睨む。
 だが、前睨んだときと同じく曹操には効果はなく、むしろ、いつも見ない夏侯惇を見下げる行為に、ますます笑みを深くした。
「そうだのう、パンチラや胸元を見せてくれると、色っぽいやもしれぬ」
「……」
 無言で、パンツの見えるぎりぎりまでスカートを捲り、ボタンを胸元まではずすと、羞恥に涙を浮かべ、曹操を見上げた。
「……社長、服、返してください」
 真っ赤な顔に潤んだ瞳、どうにか少しでもこれ以上隠れないかとスカートと胸元に置いた手が、恐ろしく艶めかしい。
 鼻の頭がつんとするのを必死に堪え、曹操は視線を外す。
「うむ!そこまで頼むなら、仕方ない、ほれ、棚の近くの段ボール箱のなかじゃ」
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