他三国志書

□特別
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 小さな声を漏らす夏侯惇を薄目を開けて確認すると、顔を真っ赤にしてとろけた表情で涙を一筋、流していた。
 水音をたてて夏侯惇から離れると、夏侯惇は力が抜けたのか、自分に寄り掛かってきた。
 相当、自分との接吻がよかったのだろうかと思うと、嬉しかった。
「……もっとしたい。駄目、か?」
「殿……」
「お前の全てがみたい」
「私を……欲しているのですか?」
 頷くと、夏侯惇は真っ赤な顔で黙って、俯いてしまった。
 嫌だったのかと思ったが、どうやら違うらしく、口元が笑みをつくっている。
 なんとも表現しづらい感情にとらわれ、夏侯惇を抱き締めた。
 答えるように、抱き締め返す夏侯惇の手は、微かに震えていた。
 行動で示す夏侯惇を手放したくない。
「……特別、か」
 呟き、この特別な思いを分からせるように、愛しい男に口付けた。



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