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□愛に狂う者は美しい/芳空
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勝手に身体動いて、
勝手に声が出る。

息が切れて、
心臓の音が聞こえて、
体温を感じる。


生きていると実感ができた。




愛に狂う者は美しい









「 愛してる 」


そう言われた気がした。
けども頭は上手く回らず、思考どころではない。

その“最中”ではいつもそうだった。

誰かが感度が良い、淫乱、などと罵っていた事もあったが、それはあながち嘘ではないんだろう。

実際にその行為が始まってしまえばもう考えるまともな思考は出来なくなる。
身体がたまらなく疼いて、体温が上がって、自然と声も上がり、馬鹿みたいに心臓の音が煩かった。


( 生きている )


そう実感出来た。

ただ、それだけ。



「 愛してる 」

「 好きだよ 」



いつも言われている気がする。
曖昧なのは、もう既に思考は上手く働いていなくて何となく口の動きでそう感じただけだ。
そのうち、それさえもわからなくるくらいに夢中になる。

夢が覚めると、酷く冷静になり馬鹿馬鹿しくなる。

何度やめようと思ったか。


それでも、



彼の大きな背中が好きだった。

彼の腕は心地よかった。



しかし、その感覚に慣れたこの身体は彼がいない夜に不満を覚え始めた。

それは逆に自分を酷く冷静にさせた。




それでも、



彼のやわらかい髪が好きだった。

彼の優しく撫でる指が心地よかった。



しかし、それも彼のいない夜には自分を冷静にさせる。



だから、



何も考えずに済むように、次の相手を求める。



「不思議ですね」

「……」

「村神くんはともかく、まさか近藤くんとそのような関係だとは思いませんでしたよ」

「…そうか?」

「あまり深くは追求しませんでしたが…先日お亡くなりになられた八純さんとも関係があった様ですね」

「だったら何だ?」


「誰でも、いいんですか?」

「ああ」


「わかりませんね」

「誰だって一緒だ」


どうせ何もわからなくなる。


「では、私とでも?」


「試してみるか?」







汚れ一つないこの高級そうなスーツにしわをつけるのは悪くない。
鼻につく高そうな香水も今では心地いい。


そうしてまた生きていると実感する。

ただ思考停止に安住しているだけかもしれない。
今はそれでも構わない。

きっとそのうち冷静になる時が来るんだろう。


そしたら、


「 愛してる 」

「 好きだよ 」


この言葉だげ何故か頭に残る理由もわかる時が来るのだろうか。





鏡に映った自分はとても醜く見えた。



愛に狂う者は美しい
(腕の中で明日の人を想う)

END


 

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