Missing

□約束をしよう。/俊空
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「そんな下らない事が、生きる糧になったりするんだよ。愚かだが、大事な事だ」


約束をしよう。





痛みを通り越えて、徐々に感覚がなくなっていく。
地面へ流れゆく自分の血を眺めながらぼんやり思った。


―――嗚呼、死ぬのか。


それは嘆きのような、諦めのような。
もう、今更だ。
動かないこの身体では、流れゆく血を止める事も出来ない。
それに、死にたいという願望はないにしろ生きたいという願望もなかった。

空目を守れない、

それを受け入れた時点で俊也は諦めていた。

そして黙って空目を送り出す。

もうこの時点で俊也にとって生きる事はどうだってよかった。
もう自分に出来る事など何も残されていないのだから。

薄れていく意識の中で思う。


最後まで一緒にいれてよかった…


俊也は思う。
幼い頃から、空目は唯我独尊で手間がかかって、我ながらよく付き合ってきたな、と。

俊也は思う。
最後まで危なっかしかったな。

俊也は思う。
嗚呼、そうだ。忘れていた。
とても、大事な事。


約束を……、













「約束?」

空目は秀麗な眉を寄せ、いぶしげな顔をした。

「そう、約束」

「またその話か、前にも言っただろう?実に下らん」

どこにも守れる保障がない。
特にお前の言う約束とやらは。
空目はそう言って聞く耳をもたない。

「俺が勝手にしたいんだよ。保証も何もなくても」

「それが何になる」


「強さになる」


俊也ははっきりとこたえた。
空目は諦めたようにため息をつく。

「勝手にしろ」









ああ、もう指先さえも動かない。

意識が消えていく。
身体が鉛のように重いが、不思議と痛みは感じない。

「空目………」


もう、行ってしまっただろうか…

遠い、場所へ。


「何だ?」


霞む視界に、


「まだいたのか…」


君がまだ見える。


そうだ、約束を。


「約束を……するんだろう?」

勝手にしろ、って言ってたくせに。

「覚えてたんだな…」

「約束は一人では出来ないだろう?一緒にしてやる」

そう言うと空目は俊也の手を握った。

「空目……約束だ、」

「うん」


小指と、


「今度、出会えたら…次こそはお前を守りぬく…」

「うん」


小指を、


「たとえ離ればなれになってもまたかならずお前を見つけだすと約束するから…」

「うん」


絡める。


「だから……それまで元気でな」

「うん」


小指と小指を、きつく絡める。
嗚呼、このまま放したくはないけれど、



「「 約束だ 」」




呼吸が出来ない、
意識があるのかないかすら最早判らない。

お前がまだ其処にいると、小指から微かに伝わる体温が教えてくれた。

どうか次に目をあけた時も、
お前が隣にいてくれますように…



約束をしよう。
(かならず君を迎えにいくよ)

end

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はやく行かないと想二にとられちゃうぞー!笑

2008.5.璃里子


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