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□猫と少女
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(ダメだ…)


今手を出すなら最期までみてやらなくてはいけない。
中途半端に構えば要らぬ期待を抱かせ、いずれ絶望に変わるだろう。
そして今の恭介には子猫を飼うだけの環境も暇も無かった。

差し出した手を緩やかに引っ込めた。
途端に子猫がうるうる瞳を潤ませたが見ぬ振りをしてその場を立ち去った。






次の日。
やはり気になってあの子猫の元を訪れてみた。
段ボールを覗いて愕然とする。

「い、いない…」


薄汚れたタオルをめくっても、辺りを探しても子猫の姿形を見つけることは出来なかった。

嫌な予感がする。
もしかして、保健所に連れて行かれたとか。
いや、他の猫にいじめられた挙げ句、逃げ出したとか。
オロオロ頭を抱えていると聞き慣れた声が聞こえた。
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