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□拍手集
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●バージル








書斎にこもったかと思えば3日間出てこず、かと思えば自室にこもり1日眠り込む。

彼の生活スタイルはおおよそ真似できるそれではない。
そもそも食事はとっているのだろうか。きちんと栄養のある物を食べているのだろうか。
今更聞けるわけもなく、ただただ書斎の前をうろうろとするしかなかった。

バージルが書斎にこもって4日目。今までからすると最長記録の更新だ。
さすがに心配で、だがしかしその重厚とも言える扉を開ける勇気は無い。

うー、と唸り頭を抱える。
もしかしたら干からびてからからになっているかも!
いや、彼のことだ、寧ろ新しい知識が栄養なのかもしれない…。


ああ、じれったい!


「何をしている」


見下ろすアイスブルーの双眸。
眉間には深い深いシワが。
明らかに彼は不機嫌だ。

「あ、いえ、何も」

いつ扉が開いたかとか、いつから真後ろにいたとかぐるぐると疑問が浮かんでくるが、ここは一先ず退散が賢明だ。
くるりと背を向け、一目散に走り出す。「ごめんなさーい」と言い残して。



バージルでさえ目を疑う速さで彼女は自室に逃げ帰った。
脅かすつもりは無かったが、扉を貫通して届く唸り声は勘弁願いたかった。丁度良い。

かつん

と、爪先に何かが当たる。
目線を落とせばトレイが。
皿にいくつかサンドイッチが並んでいる。彼女の手製だろう。不格好で不揃いのサンドイッチだ。


「……ふん」


バージルはトレイごとそれを持ち上げると再び扉の向こうへ。
相変わらずアイスブルーの瞳は鋭く何かを睨んでいるが、その眉間にシワは無くなっていた。




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