恋愛方程式
□1Story
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「ねむ…。」
声の主は流狼 雷雅(ルロウ ライガ)。
髪は銀、目は紅と言う、一見変わった風貌を持つ彼。
整った顔立ちをしていて、身長も高くスタイルが良い。
しかし今の彼は、髪は寝癖だらけで、眉間に深い皺が刻み込んである。
そしてここは私立彩龍学園高等部。
雷雅の安らかな寝顔を遠巻きに見ていた女子は、いつもは絶対に起きる事がない雷雅が起きたので、一斉に黄色い歓声をあげ始めた。
雷雅の眉間に刻んであった皺が、いかにも不快そうに、更に深く刻みこまれた。
「…お前等誰?人のクラスで騒がないでくんない?本当に迷惑」
そういったや否や、雷雅は深い眠りに落ちていった。
雷雅のそんな暴言にも、黄色い歓声があがる。
そもそも雷雅がこんなにも真昼の学校で眠いのは、その仕事に関係がある。
昼はごく普通の学生。……多分。
しかし夜は、クラブ[薔薇水晶]1ホスト。
そう、雷雅の仕事とはホスト。
もちろん年齢は偽ってあって、それでいて1だ。
普段はこんなに無愛想な雷雅だが、ホストになると一変し、営業スマイル全開になるのだ。
その気品のある顔立ち、優雅な振る舞いが役立っているのであろう。
雷雅はかなりの額の給料をもらっている。
しかし家族関係は不明で、学費も自分で払っているのだ。
雷雅が周りに一喝し、眠りに落ちた後、また女子が遠巻きに雷雅の安らかな寝顔を観察していた。
しかし、同じように遠巻きに雷雅を見ていても、他の物とは違う存在感を放つ者がいた。
彼女の名は楓禮 優祈奈(ホウライ ユキナ)。
漆黒の髪と目をもつ美少女。
色白なため、その漆黒の髪が良く映えて美しい。
しかし彼女は微笑みもせず、まったく表情を変えずに雷雅を眺めていた。
いや、眺めていたと言うよりは、凍てつく様な視線で雷雅を射抜いていた、と言った方が正しいかもしれない。
優祈奈は、他の雷雅のファンの子達とは違い、雷雅と同じクラスだ。
雷雅と同じクラス、つまりはA組に入るのは死ぬほど難しく、A組とは、学年トップクラスの手段の集まりだ。
寝てばかりいる雷雅は学年首席。
優祈奈も学年次席。
超人の集まりとはこの事。
そして優祈奈は、安心そうに眠る雷雅を、恨めしそうな視線でながめていた。
その視線が意味する物とは…?
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