恋愛方程式

□1Story
4ページ/6ページ

由真は廊下から出て、自分の目を疑った。

由真の反対方向から、まだ眠そうな雷雅がフラフラと歩いて来た。

「人、間…?」

夕日にあたり、輝きを放つ雷雅の美しい銀髪、少しの濁りもない紅い目。

まるで人でないような存在感を放つ雷雅に、由真は目を奪われていた。

一度立ち止まってしまった足は動かず、由真はそこに立ち尽くしていた。

雷雅がだんだんと由真に近づいていく。

そして、立ち尽くしている由真の真正面で、雷雅が止まった。

「お前誰?ものすごく邪魔なんだけど。人の顔ジロジロ見てんじゃねぇよ。一辺死んでみれば?」

息継ぎもなしに、言いたいだけ暴言を吐いてから、雷雅は由真を避けてまた歩き出した。

雷雅の瞳は、由真なんて存在しないかのように、まったく由真を映していなかった。

「(あの瞳に、あたしを映して欲しい)」

由真は強く、そう思っていた。



所変わって、ここはクラブ[薔薇水晶]。

なかなか名の知れているホストクラブで、常連客は社長令嬢などばかりだ。

そんなクラブの1ホスト、雷雅。

美しい容姿とその甘い言葉で、どんなお客も必ずボトル5本以上は空けてしまうと言う、ホスト界で恐れられている人物だ。

そんな彼は、学校から帰り、すぐに着替えて身だしなみのチェックをした後、ホストクラブに出勤する。

年齢は偽っているため、もちろんお酒は飲む。

だが、新人ホストのように一気飲みなどはせず、ボトル1本に対し、グラス1杯分しか飲まないのだ。

それは未成年だからと言う理由もあるが、一流のホストはほんの少量酒を飲むだけで、飲みっぷりでお客を喜ばせる事など、絶対にないのだ。

雷雅は若干16歳ながら、そんな事まで気を使い、お客を喜ばしていた。

「「「雷雅さん!出勤ご苦労様です!!」」」

一足早く出勤していた後輩のホスト達が(実年齢で言うと雷雅のほうが後輩だが)一斉に雷雅に挨拶をした。

「あぁ、お前等も出勤ご苦労様。今日も頑張ろうな」
雷雅は、学校では決して見せない微笑を見せて、その場を後にした。

後輩達は皆、雷雅に懐いており、雷雅は皆の憧れの的だ。

「雷雅さんって、1でも気取ったところがなくて、俺等と同じ目線で話してくれるから、すごく良いよな!」

「俺もそう思う!雷雅さんは本当にカッコイイよ。まさにホストの鏡だ」

後輩たちが、皆口々に雷雅を褒めたたえる。

そんなことをしている間に、クラブ[薔薇水晶]が開店した。




次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ