恋愛方程式
□1Story
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「「「いらっしゃいませ。美しい薔薇姫」」」
大きなドアが開き、ホスト達が一斉に、中へと続く道に並ぶ。
そして決まっている台詞を言い、皆同時に頭を下げる。
今回のお客はあの、楓禮 優祈奈だった。
制服姿のままで、顔色一つ変えずに中へと入っていった。
すると、一人の男が優祈奈の前までやってきた。
どうやらオーナーのようだった。
「おや、また来たんですね。いらっしゃいませ、優祈奈様」
と、オーナーが優祈奈に頭を下げる。
「うん。また来た。早くあれ出して」
優祈奈は恐ろしく冷静にオーナーに向かって言った。
「かしこまりました。少々お待ちください」
オーナーはそう言うと、どこかへと消えていった。
優祈奈はここのオーナーと知り合いで、優祈奈の家がお金の援助をしているのだ。なので優祈奈は好きにここを出入りできる。
そしてもちろん、雷雅の事も知っている。
「優祈奈様、第1ルームに控えております」
「分かった。有難う」
優祈奈は微笑みもせずに淡々と会話をし、部屋へと向かった。
第1ルームとは、スウィートルームの事であり、第1ルームが特に広いとされている。
優祈奈がドアを開けると、その先にいたのは雷雅だった。
「…どうもこんばんは。優祈奈様」
「その言い方、嫌いだって言ってるでしょ。学習能力ってものはないの?」
優祈奈は不快そうに眉間に皺を寄せる。
「俺だって言いたくて言ってるわけじゃない」
雷雅はいかにも嫌そうな顔をして、そっぽを向いた。
「あ、そう。まぁ良いわ」
優祈奈は、いかにもどうでも良さそうに答えた。
「ったく。こんなことで毎回毎回指名すんなよ。指名するなら金を出せ。金を」
雷雅は、学校とは違い、ハキハキと喋りだす。
「お金なら出してるじゃない」
「クラブには、だろ?」
「……別に良いじゃない。それくらい」
優祈奈は珍しく困ってみせた。
すると雷雅はすぐさま反論にうつる。
「俺は良くないの!金が必要なんだよ!」
「何でよ」
「何でも!」
こんな感じで、優祈奈がくると、必ずマシンガントークに突入してしまう。
いつもは大人びている優祈奈も、時々少しだけ、子供のように笑うのだった。
そして長い夜は、儚く過ぎて行った……。
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