ゲレゲレ冒険記
□再会
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サンチョを先頭に屋敷に足を踏み入れる。
すると、話し声が聞こえたのだろう。
屋敷から男が一人、出てきた。
不信気な目でこちらを見ながら言った。
*「我が家に何か用ですかな?」
サンチョ「初めまして。私どもは通りすがりの旅の者ですが……。それにしても、これは立派な石像でございますね」
サンチョが石像を見ながら言うと、男は怒っている様な、悲しんでいるような複雑な顔をして黙り込んだ。
石像を見ない様にしている様だ。
*「…… …… ……」
サンチョ「どうでしょう? この石像を私どもにお譲り願えませんか?」
すると、男は顔を背けて言った。
*「ふん! そんな石像だったら、ただでくれてやろう。さっさと持っていきなさい!」
男にも、何か複雑な事情がありそうだが、今はそれを気にしている余裕は無い。
サンチョが嬉しそうに言った。
サンチョ「おお、そうですか! では、お言葉に甘えて……。さあソラ様!」
ソラ「はい、サンチョおじさん。この杖を使うのね」
サンチョの言葉を受けて、ソラはストロスの杖を天にかざした。
不思議な光が石像を包む……!
テンはゲレゲレの身体を掴んで見守っている。
ゲレゲレも固唾を飲んでその光景を見つめていると、灰色だった石像が、徐々に色を取り戻し始めた。
一際強く、杖が輝きを放つ。
なんと、石像にされていたアベルの身体が元に戻った!
血色の戻った、アベルの瞳がゆっくりと開かれる。
それと同時に、ソラの手にあったストロスの杖は、音もなく崩れ去った……。
テンがソラの隣に駆け寄ると、2人は手をつないだ。
2人共、小さく震えている。
*「うわ! 石像が人間になったぞ! あわわわわ……」
男は驚いて屋敷の中に逃げ込んむ。
アベル「…………うっ」
サンチョ「坊っちゃん!!」
アベルは立ち上がろうとして、ふらついた。
サンチョがアベルに駆け寄り、その身を支える。
サンチョ「や、やはりアベル王でございましたね! さ、探しましたぞ! わ、わかりますか? アベル様! サンチョめでございます!」
アベル「……サン、チョ…?」
まだ、ぼんやりとしている様だが、サンチョを見て、しっかりと呟いた。
……アベルだ!
アベルが……。アベルが、生きていた!!
サンチョ「おお! 気が付かれましたかっ!」
サンチョはゲレゲレの隣で緊張で固まっている双子に声を掛けた。
サンチョ「さあ坊っちゃん逹、お父上ですぞ」
それに、アベルが双子を見る。
アベル「……テン? ソラ?」
アベルの呟きに、双子がビクッと震える。
そんな双子を見て、アベルは微笑んで呼び掛けた。
アベル「テン、ソラ。大きくなったね」
テン「……! あ、あなたが、僕のお父さんですね! 僕、お父さんの事いっぱい、いっぱい、さがしたんだよ!」
ソラ「あの……。初めまして、お父さん。私、ソラです。この名前、お父さんがつけてくれたんですよね。お父さんの事はサンチョおじさんからいつも聞いていました。そしてお母さんの事も……」
双子は、緊張しつつも、練習していたのであろう事を一気に言う。
テン「それから世界が大変だって事もね! ねえ、お父さん! 僕達と一緒に今度はお母さんを助けに行こうよ! それから悪いやつをやっつけて僕達が世界を救うんだよね!」
一気にまくし立てる双子の言葉をアベルは黙って聞いていた。
その目が、テンの背中に向けられる。
テンもそれに気付いて言った。
テン「お父さん聞いて! お父さんが残して行った天空の剣。僕、装備出来たんだよ!」
サンチョ「まあまあ坊っちゃん逹。そんなにいっぺんに色んな事を言われても」
一気に喋る双子をサンチョが止めようとしたが、アベルがそれを止めた。
膝をついて、双子と視線を合わせる。
両手を広げて、言った。
アベル「テン、ソラ。……おいで」
テン「お、お父さんっ!!」
ソラ「お父さん!」
ずっと、アベルと距離を取っていた双子がアベルに駆け寄る。
双子も、どう接して良いのか迷っていたのだろう。
アベルが駆け寄ってきた我が子を抱きしめる。
アベル「テン、ソラ……!」
テン「お父さんっ! うわーん!」
ソラ「ずっと、ずっと、会いたかったの……!」
アベルの腕の中で、双子は泣きじゃくる。
アベルの目にも涙がたまっている様に見えた。
暫くして。
双子達が落ち着くと、サンチョが言った。
サンチョ「ここはひとまずグランバニアのお城に戻る事にしましょう」
その言葉に、アベルが立ち上がろうとする。
しかし、まだ身体が慣れていないのかふらつく。
ゲレゲレはすぐに駆け寄ってアベルの身体を支えた。
アベル「ゲレゲレ! ありがとう」
ゲレゲレ「ふにゃあ」