ゲレゲレ冒険記

□ラインハット
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東に向かい数時間も歩いた頃、川が見えてきた。
川の畔には関所が建っている。パパスはそこに向かった。
中では兵士が一人立っていた。兵士はパパス達を見ると声をかけてきた。

*「待て、身分を明かされよ、許可無き者は通さぬぞ」

パパス「私はサンタローズに住むパパスという物だ。ラインハット国王に呼ばれお城に伺う途中である。どうか通されたい!」

*「おぉ!あなたがパパス殿ですか!? 連絡は受けています。どうぞお通りください!」

パパスが名乗ると兵士の態度が一変した。敬礼をして通してくれた。
その先はトンネルの様になっていて、川の下を潜る形になっている。
トンネルを抜けると、パパスが言った。

パパス「アベル。ここから先はラインハットの国だ。この上からの川の眺めは中々の物らしいぞ。よし! あまり時間はないがお前にも見せてやろう」

パパスはそう言うと、川がよく見通せる物見台へと上がった。
ゲレゲレは柵の隙間から川を覗いた。水面が光を受けキラキラと輝いている。背伸びで見ようとしていたアベルをパパスが肩車した。

パパス「どれ、よいしょ……と」

アベル「わあっ! よく見える! お父さん背が高いね」

パパスは微笑むとふと、隣で川を見つめる老人に気付いた。

パパス「もし……。どうかされたかご老人?」

*「ほっといてくだされ。わしは川の流れを見ながらこの国の行く末を案じているだけじゃて…」

パパス「ふむ……。あまり風に当たると身体に毒ですぞ。ではごめん!」


アベルを下ろし、老人に挨拶すると、アベル達を引き連れ再びトンネルへと歩き出した。
アベルと顔を見合わせ、首を傾げながら付いていくと、トンネルの半ばでパパスが声を上げた。

パパス「おっといかん! ラインハットに行くんだったな……」

アベルとゲレゲレはクスクスと笑った。


川を渡ると今度は北に向かった。
ラインハットの回りは、サンタローズの辺りよりも強い魔物が多かった。
しかし、どれもパパスの敵ではなかった。
ゲレゲレもパパスのように強くなりたいと思った。
日が暮れてきた頃、夕日に照らされたラインハットのお城が見えてきた。
お城の手前は城下町になっている。城下町は賑やかだった。
パパスは真っ直ぐ城へと向かった。

城へと一歩踏み入れると、すかさず兵士が言った。

*「待てっ! 我が城に何用だっ!?」

パパス「私はサンタローズに住むパパスという物だ。国王に呼ばれ来たのだが」

*「おぉ! あなたがパパス殿ですか!? これは失礼いたしました。国王がお待ちかねです。さあこちらへっ!」

ここでもパパスが名乗ると兵士の態度が一変した。
兵士に連れられて、ひときわ豪華な部屋に着いた。玉座に王様が座っている。

*「王さま! パパス殿をお連れしました!」

*「ふむ。ご苦労であった。そのほうは下がってよいぞ」

*「はっ! 失礼いたします」

ここまで案内してくれた兵士は下がって行った。

*「さてパパスとやら。そなたの勇敢さはこのわしも聞き及んでいるぞ! その腕を見込んでちと頼みがあるのだが……」

*「コホン……。パパス、もう少しそばに! 皆のものは下がってよい」

王の脇に控えていた兵士達は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに最敬礼して下がって行った。
パパスはアベルとゲレゲレを振り返って言った。

パパス「アベル、そんな所に立っていても退屈だろう。よい機会だからお城の中を見せてもらいなさい。一通り見るうちには父さん達の話も終わるはずだ」

アベル「うん。分かった。ゲレゲレ 行こ! お城を探検だ!」

アベルが駆け出したのでゲレゲレも慌てて付いて行った。
部屋を出る間際、ゲレゲレの聴覚はわずかにだが、パパス達の会話を聞き取れた。

*「久しぶりだな、パパス。まだ…   には戻らぬのか?」

パパス「ああ、伝…  の…  を見つけ出… までは……」

…………

最後の方はよく聞き取れなかったが、アベルを見失いそうになり、その場を離れた。

下の階に降りるとアベルを見つけた。お城が珍しいのかキョロキョロと辺りを見回している。ゲレゲレに気が付くと駆けよってきた。

アベル「あっゲレゲレ! あのね、僕、前にお城にいる夢を見たんだ。ここじゃないと思うけど……。それでね、お父さんが王さまだったんだ!」

お城を見て思い出したのか、アベルが話し出した。

アベル「夢の事をお父さんに言ったら、寝ぼけているんだろうって言われたけど……。赤いマントを着て、とってもかっこよかったんだよ!」

ゲレゲレもパパスが王さまの格好をしているのを思い浮かべた。
ラインハットの王さまの様だとしたら似合わない……。しかし赤いマントは似合いそうな気がした。
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