墨染祭

□生徒会長の灯想
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私立天月学園、天月はあまつきではなくてんげつと読んでほしい。
語り部たる俺はこの学校を今年卒業する………失礼、冗談だ。
俺は今年この学校に入学することになっている、受かっていればの話だが…まぁ受かっているだろうこれでも頭の出来は中々のものだと自負している。何より完全記憶能力を持つ俺としては今歩きながら眺めている雪の結晶すらも見える範囲ではすべて覚えている。
季節は冬、月は如月、場所は東京、俺の横を歩く少女はベビーカーを引きながら俺の速度に着いてきている。
ベビーカーには俺と横の少女をうまいこと足して二で割ったような赤ん坊が眠っている。少女は赤ん坊を起こさないように振動を抑えてすすむ。
季節は移ろい、四月となり俺と少女はめでたく天月学園に入学した。
おしまい………

舞台裏では拍手とクラッカーの嵐が待ち受けていた、正直なぜここまで? と聞きたいぐらいだ。
 「おつかれー!!」
こいつはアゲハ、朝河美羽が本名で黒髪に天然の金色の眼に河と言う字を青としてアゲハ蝶っぽいからアゲハってあだ名だ。
 「良い演技だったよ役所君」
誰が役所君だ!! こいつは監督のバカ、名前は聞いてない。とにかくバカだ、それしかない。
 「お疲れ、会長」
こいつが企画者、演劇部部長の雫石千桜、困った時は皆が頼る学年二位で剣道全国覇者のmiss文武両道だ。俺が劇に参加したのもこいつが頭を下げたからの他ならない。
じゃあ俺は帰らせてもらうぞ。
そのことを告げると周りから大ブーイングが起こった。
 「それは困るよ会長、これからみんなで最終ミーティングなんだ、主役がいなきゃ話にならないよ」
そんなこと言われてもこっちだって困る、今日はスーパーの特売日なんだ。
 「じゃあ私も一緒に行けば手分けして買えるよね? 何時から行くの?」
(いや、そもそも大十六夜祭の演劇を夏休み一週間前で仕上げるのはどうだろう)
俺はその言葉をギリギリ抑えつけて行くならさっさと行くぞと言い俺は演劇ホールを後にした。
彼が出てった後、千桜も追うようにすぐに出た。「ミーティングはいつもの焼肉屋でね」の言葉を残して。
 「やっぱ部長って会長のこと好きなんですかね」
下っぱの赤坂御影がアゲハ達に聞いてみると皆沈黙してなにも言わなかった、しかし赤坂はこの沈黙こそが答えだと感じた
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