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「遅刻だー!遅刻だー!」
駆ける白ウサギ。
一方アリスはというと…
「ぜぇー…ぜぇー…っ」
疲れきっていました。
「はぁはぁ、さすが若…いえ、白ウサギ!素晴らしい脚力です…!」
なぜか誉め称えるアリス。
原っぱを突っ切り、小川を渡り、森を駆け抜け、谷を飛び越え、時に野生動物に追い回されながらアリスは道なき道を行く白ウサギに付いていきます。
既にふらふらなアリスと違い、走る勢いの衰えない白ウサギはついに穴の中にまで入っていきました。
アリスも遅ればせながら後に続きます。
頭に葉っぱやら小枝やらをくっ付けたアリスは四つん這いに進みながらフッともはやなげやりに笑います。
「ふふ…このアリスどこまでも着いていきますとも。うう、それにしても暗いせまい、あいた!?」
「にゃふう…」
アリスの腕の中にいる猫は溜息のような相槌を打った。
そして穴を進んでいくうちに
落ちた。
「きゃ――――っっ!?」
落ちた穴は円柱のような構造になっており、アンティーク調の様々な物が浮いていました。
しかしそんな摩訶不思議な光景に心躍らせることも暢気に眺められるような図太い神経はアリスにはありません。
「落ちてる!?はわわわわ、ど、どうすれば…は!そうです。いっそ地面諸々凍らせて」
「死亡率を上げてどうする」
「って、キャアアアアア!!?」
「うるさい…」
いつ現れたのか猫耳としっぽを生やした女はうるさ気に耳をぺたりと伏せます。
すらりとした豹柄ボディにピンクのファーを巻いた女は何故かアリスと一緒に落ちていました。
「あ、な、い、だ…!?(あなたいったい誰ですか!?)」
「ワタシアナタガカッテルネコデス。チシャネコトオヨビナスッテイ。ドウゾ?」
「き、鞠様…いえチ、チシャ猫さん。もう少し感情込めて」
「………にゃー」
「(流された!!)」
「ブラッシングとお風呂は毎日。寝床は羽毛100%の天蓋付き。餌は猫缶じゃなくてキャビア、フォアグラ、トリュフを所望する」
「(なんてブルジョアな猫…!!)」
「5つ星フレンチがいい」
「(そして味にうるさい…!!)」
初めて明かされた飼い猫の高級思考にアリスは衝撃を受けた。
どうやらアリスの飼い猫らしい目の前の猫は落下中にも関わらず、暢気にしっぽのお手入れをしている。
『神経が図太いどころか消失しているのかもしれない』とアリスはちょっと疑った。すかさず頭にマラカスが飛んできた。地味に痛い。
「わんだーらんどへご招待」
「へ?」
どすん
「ぶっ!?」
いつの間にか底に着いたようです。
顔面から着地したアリスとは違い、チシャ猫は持ち前の身体能力を発揮して華麗に着地を決めました。拍手と共に外野が10.0満点を付けます。
穴の底はドーム形になっており奥には更にトンネルが続いてました。
「ふう、やっと入り口…この先にショッキングな毒キノコや巨大芋虫、飲んだくれと暗黒女王が待ち受けていると思うと…ぷっ、不憫な」
「わ、笑いました?笑いましたか!?今笑いましたよね!?」
「…れっつごー」
「いやあああ!か、帰ります!帰ります!!お願いです後生です見逃してください―――!!」
早くも危険を察知したアリスは逃げようとするが抵抗虚しくチシャ猫にスカートを掴まれずるずると引き摺られて行きます。
『ガンバレヒロイン』とチシャ猫の棒読みの声援を受けたアリスの悲鳴がトンネルにこだましました。
アリスの受難は始まったばかり…。
裏舞台
リ「絶っっっ対、ダメ!!そんな姿で人前に出るなんて許しません!!」
鞠「でも衣装…」
リ「ダメ!!」
ピンクの豹柄全身タイツ(猫耳カチューシャ、しっぽ付き)。
苦肉の策でリクオが急遽ファーを用意。
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