*愛を求めて〜恋をして初めて愛を知る*


□愛求*simple girl〜T*
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愛求*simple girl


真冬、青森の冬はとにかくシバれる。何でもかんでも凍りつくその日に、十年越しに再会を祝うイベント、同窓会が、あるホテルで催された。
とても気位の高いホテルに、久し振りに友に会えることを喜ぶ者達は、外の寒さを忘れ大いに楽しんでいた時だった。
この場所には相応しくないような服装の女がいることに、司は目に留まる。地味で何とも言えない、例えるなら幸の薄い女だ。
周りの同級生の女共が、ソレのお陰で一層華やかさが際立つ。不細工な女でもケバい化粧で出ているというのに、それさえもしていない。ナチュラルにも程があった。

「なあ、あんな女いたか?」

ワイングラス片手に司は友に尋ねると、友はあぁ…と思い出したように話した。

「お前アイツと仲悪かっただろ?霞だよ、蜩 霞(ひぐらし かすむ)!」
「えっ、ひ…蜩!?嘘だ!昔はデブだったじゃねぇか!?」
「お前酷いな〜、良くてもぽっちゃりって言ってやれよ…。十年位に卒業して以来だろ?そりゃ、変わるさ」

そう言って友は興味もなく、直ぐに隣の仲間に話し掛けにいった。司は少し戸惑いを感じていた。
十年位前、霞の友達を自転車で吹っ飛ばして以来、元々折り合いが良くないことは分かっていたが、それがきっかけで仲の悪さがエスカレートしたのは言うまでもなく、結局卒業しても仲は修復しなかった。
小肥りで、今もだが地味で偏屈で、特に司のような破天荒なヤンキーは毛嫌いをしていた。でも認めるところは認めるという点は、生真面目を物語る。人当たりはそこそこ良く、当たり障りのない女だったことは、司も思い出した。
そんな昔を回想していると、霞の方からこっちに向かってきた。何の用だと身構える司に変わり、霞はスッと司の横を素通りする。
コイツ俺を無視して素通りかよ!と少し苛立つが、彼女は一人の老人に声をかけた。

「お久しぶりです、先生…」
「お…、おお、蜩か?」
「はい…御無沙汰しております。風の噂で、お体が優れないと耳に挟みました」
「なあに…ちょっと風邪を拗らせたんだよ。しかし、見違えたな…今は大丈夫なのかね?」
「はい、今の所は…。そろそろお暇します…お体にお気をつけ下さい」

先生との話を終えたのか、また一人になる。友との会話も見たとこ少し話して一人っきりになろうとしていた。
それがどことなく物悲しそうで、司は飲みながら霞の様子を監視していた。
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