短い文

□巡る季節と心
4ページ/5ページ


でも…何故だか食べながらもふと涙が出てきた。

毎年変わりなく悪戦苦闘するのに、年々美味しくなっていくケーキ…。
…私は上達してないと自覚がある…やはりC.Cが……っ!

そして気付く。

いつになっても変わらないのは彼女ではなく、私だったと。

思い出に縋っている自分に安堵していたのだと。
彼女はそれに気づいて欲しかったのだと。

だからこそ彼女は毎年…。

彼女はこの年を最後に来なくなった。役目を果たしたかのように。



前を見て歩く、彼女のおかげでそう思うようになった。
そして、ようやく私も歩き出す。
自然に笑みがこぼれるようにも。


それから―
他の人を好きになった。恋愛し、そして結婚も。


でも……あなただけは特別で…。
あの日々のことは、一生大切で…。



紅蓮のキー。
毎年バレンタインの日に作るチョコレートケーキ。
この2つは死ぬまで私と共にあり続けた。



END.


NEXT→あとがき
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ