短い文
□巡る季節と心
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でも…何故だか食べながらもふと涙が出てきた。
毎年変わりなく悪戦苦闘するのに、年々美味しくなっていくケーキ…。
…私は上達してないと自覚がある…やはりC.Cが……っ!
そして気付く。
いつになっても変わらないのは彼女ではなく、私だったと。
思い出に縋っている自分に安堵していたのだと。
彼女はそれに気づいて欲しかったのだと。
だからこそ彼女は毎年…。
彼女はこの年を最後に来なくなった。役目を果たしたかのように。
前を見て歩く、彼女のおかげでそう思うようになった。
そして、ようやく私も歩き出す。
自然に笑みがこぼれるようにも。
それから―
他の人を好きになった。恋愛し、そして結婚も。
でも……あなただけは特別で…。
あの日々のことは、一生大切で…。
紅蓮のキー。
毎年バレンタインの日に作るチョコレートケーキ。
この2つは死ぬまで私と共にあり続けた。
END.
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