記憶の欠片


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あなたは今どこで何をしていますか?

この空の続く場所にいますか?

今まで私の心を埋めていたモノ

失って初めて気付いた

こんなにも

私を支えてくれていたこと

こんなにも笑顔をくれていたこと

失ってしまった代償は

とてつもなく大きすぎて

取り戻そうと必死に

手を伸ばしてもがくけれど

まるで風のようにすり抜けて

届きそうで届かない

孤独と絶望に胸を締め付けられ

心が壊れそうになるけれど

思い出に残るあなたの笑顔が

私をいつも励ましてくれる

もう一度あの頃に戻ろう

今度はきっと大丈夫

いつもそばで笑っていよう

あなたのすぐそばで…

あなたは今どこで何をしていますか?

この空の続く場所にいますか?

いつものように笑顔でいてくれますか?

今はただそれを願い続ける…






「探したのだよ、咲乃――…」




真っ白な肌が儚さを表し、それでいてどこか冷たいような姿を感じさせ、蜂蜜色の長い髪が綺麗に靡く。
そしてその綺麗な蒼い瞳は感情の色がなく哀しみに満ちている。

彼女は今、何を思っているのか。

遠い、遠い空を見上げ歌う彼女――赤月 咲乃の声に導かれるようにして現れたのは中学時代に共に過ごした青年――緑間真太郎。


その声にゆっくりと振り向く。
そして、その姿を確認すると靡く髪を抑え優しく微笑む。




「また、来てくれたんだね。―――真ちゃん。」





* * *




二人はベンチに腰掛けそよ風にあたりながら他愛のない話をする。



「足の調子はどうなのだよ。」



「順調に回復してるわ。あとは歩けるようになるだけよ。」



「そうか…。」



咲乃の言葉に顔を顰めながらも彼女の傍にある車椅子に目がいく。


「ねぇ、真ちゃん。」


「どうしたのだよ」


「私ね、この足が治ったら高校に進学しようと思ってるの。」


「―――――!秀徳をうけるのか?」


その言葉に首を横に振ると空を見上げた。


「私の家からだったら誠凛高校か桐皇学園ってところが一番近いんですって。」



その言葉に緑間は何も返せず、ただ黙って見つめるだけだった。

その姿に苦笑するも「やっぱり、何かあるんだね。」と小さく呟く。


「・・・・私が忘れてることがそこにあるんでしょう?」


「・・・・思い出さなくていいこともあるのだよ。」


咲乃の問いにポツリと呟けばそれ以上は何も語らず、「風邪をひいてしまうから」と車椅子へと咲乃を誘導し、部屋へと戻る。
















*   *    *






「ありがとう、」


「安静にしておくのだよ」


病室へ着けばベットの隣に車椅子を置き、咲乃をベットへと座らせる。

そして自分は近くにあった椅子に腰掛ける。



「ねぇ、真ちゃんはさ…やっぱり秀徳に来てほしい?」


その言葉にチラリと咲乃を一瞥する。

そんな緑間に苦笑しながら「冗談だよ…、」と言いつつも本当は自分でも迷っていてどの高校を受験するか悩んでいたのだ。



「・・・秀徳に来いとは言えんが、誠凛は辞めておけ。…桐皇が一番お前にとっては良いのかもしれんな。」


(昔のお前なら迷わず桐皇を選んだろうな…)


その言葉は口には出せずグッと堪える。

緑間の言葉に内心?マークが飛び交うもそっかぁ。と言いながら咲乃は窓から空を見上げた。










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