The parallel world

□01/Daily life
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「行って来まーす!」

まだ買い変えたばかりの皮靴をとんとんと床に鳴らし、玄関から大声で小学生みたいな挨拶を言う。
玄関の戸を開くと、首に巻いた白いマフラーが飛びそうな程に風に流された。

ドアを閉め掛けた時、タイミングを図ったように遅れて返事が返ってくる。
彼女にとってはその挨拶はいつもの事だったし、変化があるとするなら返事が出て行く前に返って来るのは、
3日に1度のペースで珍しいと言えば珍しいし珍しくないと言えば珍しくない。

「はいはい。いってらっしゃい。」

呆れて笑いキッチンから声を出す母親の言葉は、たまに「朝から凄いテンション」と付け加えられる。その言葉に彼女もまた笑顔を作った。







      


「寒っ!」

お願いだから北風の神とか消えてくれ。いやもしいるのならだけどさ。
これは犯行だよね?逮捕ですよね現行犯逮捕だよねうん?とりあえず一纏めにして寒いっつー事ですから。

ああもう寒いんだ寒さで寒いとか言うとさういとかさむぇいになってホント北風の神みたいな声だ。
例えが変とか気にしちゃ負けだかんね。うんそれでおkおk。








道路沿いの通学路には家が立ち並んでいる。学生服の人達が其処を白い息を吐きながら学校へ向かっていた。
これはいつもの情景で、しかしながら違うのはいつもの場所の交差点に梓が居なかった事だった。


いつも一緒に通う梓の家の近くまで歩くと、冷たい鉄のドアノブに触るのが嫌になり、丁度花子の顔だけが見える高さの窓から梓を呼ぶ。

そりゃ私は健全な女子高生ですからミニスカート全開な訳ですよ。だから寒いのね。
いや家入れてって訳じゃないよ?少しでも暖かさの恩恵を受けたいって言うか、あれ意味分かんね。
両手を肩に乗せるがそれはほんの寒さしのぎにしかならない。

冬にアイスとか食べる奴の気がしれん。梓がやってたけど蜜柑アイスならいいでしょとかそうゆうのも駄目だから。
冷凍蜜柑も無しだから。焼き蜜柑は大丈夫ね。


「あ゛ぁぁぁぁずぅ゛ぅぅぅさ゛ぁぁぁぁ」

「煩い」

「あず、って閉めないでぇぇぇ!」

ぴしゃぁぁん!そんなように窓を開けてはくれたものの高速で言い掛けた言葉を無視し梓に窓を閉め鍵を掛けられる。

「ちょ、閉め出すとはなんと愚かな人間か!」

手でまたどんどんと窓を叩く。数分前と同じ状況じゃないかちょっと。
北風の神のノリとか。
つっこまない。ええそうですつっこまない。









           
          

ようやく彼女は諦めたようで、まぁ、まず窓から何をどうしたかったのかが本人にも分からないが、
梓の家の玄関のインターフォンを何回も押した。

「こんにちはー。梓ちゃん居ますか?」

「花子ちゃん?ああ、ちょっと待っててね。梓ー、用意出来たー?」

「・・・ごめんなさい。梓すぐに呼ぶからね。」

梓の声がしたと思えば、インターフォンはすぐに切れてしまった。すいません奥様。
ピンポンダッシュ並の性質悪さのインターフォン連打をしてしまったよすいません。




         
何分か後、梓が玄関から出て来た。うわぁ梓顔ヤバくないか。これ月1くらいの出没ペースの怒りだよ。
そんだけ怒られてるあたしもどうかって話しだけど。毎日1回くらい誰かに怒られてるし。馬鹿とか言わないの。
そりゃあたしは5回言わなきゃ物覚えないけどさ。

なんか文字にするとウゼぇんだよこの野郎早く死んで天国逝けやくらい。ほんと関西人はバカとかアホとか死ねとか逝けとか普通に使うよね?うん
てゆうかもう梓眉間の皺止めて。本気でそれ怖いから。

「あんたなぁ・・・。」

「この度は誠に申し訳ありませんでした土下座致します梓様!」

「え?ま、もうええから!土下座とか友達のやりとりじゃなくない?、ウチは借金取りか何かか!」








              








          
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