The parallel world

□01/Daily life
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「今日寒いなぁ・・。」

梓が流れてきた風にそう言う。

「そーなんだよそーなんだよー!めちゃくちゃ寒いっしょ?だから今私北風の神を祟ってんだよね。」

「うわぁ何そのやったった顔。」

「酷っ!梓って酷っ!つかテンション低っ!」

「前。」

ちょ、何故段差!
うわっ、そう声を出すと梓が言ったのにも関わらず転びかけた。視線ががくん、と急に落ちるが、転ぶのは免れた。
不意打ちとか卑怯!頭打って死んだらどうすんの。

幸い死ななかった、そんな考えを持った彼女であったが、ただ単にこけそうになっただけである以上、オーバーリアクションと言うか、何と言うか。

「・・・・。」

「え、ノーリアクション?!このノリで行くの?」

「はぁ。」

何貴方には呆れましたよ的な微笑みしてんの梓!ムカつくわてゆうかほんとこのノリ何ぃっぃぃ?
そりゃあさ梓はかなり美人だよ?背高いし顔ちっちゃいし肌綺麗だし。
もう私と比べたら月とスッポン以前に月と石ころが転がってるみたいな差だけど!切実にあたし可哀想だけど!
だけど一つだけ。

何で関西人の癖に、ノリが悪い?
何でやねーん的ツッコミを毎回期待してる訳よあたしはさぁ。
悉く毎回裏切られるんだよ!どっちかって言うとあたしもうボケとツッコミ両方担当してるし!

この前なんか関西弁を直したいとか言ってて、別にそんままでいいのにとか言ったら「え。」とか言われて嫌な顔をされた。何だよその微妙にムカつくリアクション。




国道を反れて路地に入ると、一本通行の歩道が無い道に入る。
何だかんだで、いつものように梓と登校してた。

        


         








学校への足取りがいつもと同じように軽いのは、きっとこんな会話が梓と続くから。
はは、こんな事言うキャラじゃないんだけど。
昔からあたしは自分を見つめ直すやら過去を振り返るとか、後ろは見れない人間で。
悪いっちゃ悪いのか。まぁ、ただたんに面倒くさいだけなのかな。




踏み切りの前に止まる学生達が何人か居た。
梓と気にも止めずその何メートルか前を話してゆっくり歩く。

小学1,2年生くらいの男の子が2人走って来て、踏み切りの前でスキーで止まる時みたいに、靴の裏を擦りながら急に止まる。
其れを横目で追いながらじっと見ると、梓が会話を中断させて踏み切りの前を見た。

「んー?どした梓ー?」

おーい、梓の前に手を交互にして揺らすと、「何でも。」と梓が言い返す。

「でもさ、ああゆうの可愛いよねー。和む和む。」

「そう?・・・煩いだけだと。」

「えーでも子供は世の宝って言うじゃーん。あ!そっか、梓弟居るもんね。最近元気?」

「話題すごく反れたやんな。弟は、うーん、交通事故にあってない限り大丈夫。」

「ねぇちょっと聞いていい?」

「うん?」

「それはツッコんで欲しいの?性格なの?」

「別に。」

「いやもうちょっと乗ろうね?梓!」


いやね、ちっちゃい子があーゆー気取ってる感で何かしてるとなんかめちゃくちゃ可愛い。
あ、別に子供好きとかじゃないからね?どっちかって言うと何考えてんのか分かんないから。
最近の子の心理を理解してないから。ゲームとか私壊しまくる派だから。
あと断じて変態とかじゃないから!そこら辺よーく覚えておくように!
















踏み切りののレバーが下がり、風を起こして走る電車が今日は4両だった。
レバーが上がると一斉に歩き出す。
と言っても私は梓に向き合っていたから、後ろ歩きって事でかなり危なかった。ぶつかっても知らんからなとかはさっき言われた。


















「わっ、とっと、と。」

危ない危ない。誰だよこんな所に石と線路置いたの。線路には間違ってるかもだけど。2回目だよこけそうになるの。
線路にしゃがみこむと、ひねった足を見る。

―(あれ。)
妙な違和感を一瞬だけ感じ取ると、体が軽くなったような感覚に包まれた。
それにしても今日は風が強いな。髪が凄く飛んでる。




流れてきた強風に目を瞑るのを余儀なくされると、その次に目に映る光景が理解出来なかった。





頭の中はただ単純に疑問の思いだけが膨らむ。逃げる事は出来たかもしれないけど、その時の私に長く感じただけであって、本当は一瞬の出来事だったのかもしれない。
だって、あの小学生の子達が踏み切りの前に居て、皆前に居て。
そして目の前には、私に手を伸ばす梓が居て。


何で、何が、起こってる、の?


私が「踏み切りの中に居る」なんて気付くのは、一瞬だけ前の事を思い出しただけの時だった。



スローモーションのように流れていた時が元に戻る。
凄い轟音が聞こえて、強い風が体に当たって、体がふわりと浮いたような感覚の内に、何もかも、見えなくなった。







      







                     
  
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