女王様と俺
□春
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小娘へのボディーガード生活が本当に終わったのは、ホグズミードでハリー達と豪遊した日。
グリフィンドールの談話室までハリー達を送る。(勿論、買った物を運ぶ為だけじゃない)
談話室の入り口で彼らに感謝されながら別れた。
俺が手ぶらで部屋に戻る廊下を、リーマスは大きな紙袋を両手に抱えて歩く。
これを運ぶのを手伝ってはやらない。
何故かって?
納得いかないからだ。
「ったく、お前の分も俺の財布からって、どういう事だよ?」
「まぁまぁ、いいじゃない。ハリー達、言ってたよ。”流石おじさん、太っ腹だなぁ”ってさ」
「え?それ、褒めてるか?」
太ったって事じゃないよな?
「褒めてるに決まってるじゃないか。今日はボディーガード兼、懐の大きいおじさんが大活躍だったね」
「そうかぁ。褒めてたかぁ。よしよし」
俺はハリーに”名付け親”らしき事を何もしてこなかった。
ハリーが一番辛かった時、悲しみを背負っていた時、俺はそばにいる事が出来なかった。
今はジェームズとリリーがいる。
完全に俺の出番は、ナシ。
全然、全く、何処にも、いい所は、なかった。
こんな事くらいで俺の出番が出来るとは思わないが、いざという時、俺もいるんだって、ハリーに思って欲しかった。
「そんなに心配しなくても、ハリーは君の事好きだよ。あんなにお金使わなくても、ね」
「ってか、お前一人で財布の中身の半分使ってるんだぞ?」
「え〜〜?気の所為じゃない?ハリー達と同じ量だよ?」
見事に空になった財布を振ってリーマスにアピールする。
「ハリー達は駄菓子だ。お前は高級チョコ。同じ大きさの紙袋でも、単価が違うんだよっ!」
全く、こいつに任せるんじゃなかった。
リーマスはにやり、と笑う。
「シリウス、子どもにはお小遣いの金額をきちんと決めてから渡すものだよ。これからは財布ごと渡すなんてしない事だね」
「………それを言う為の散財か?最初に言葉で言ってくれ」
「言っても聞かないだろう?あれ?カードだよ」
俺の部屋のドアに封筒が差し込んである。
「またラブレターかい?」
「こんな真っ黒い封筒に入れるラブレターって、どんなんだよ?」
読む前から引くだろ?
呪いの言葉の方がしっくりくる。
引っ張り出して、封筒の端を破る。
一人で開けると何かあった時に恐いので、リーマスを巻き添えにした。
「せめて、ペーパーナイフとかさぁ」
「スネイプからだ。話があるんだと。部屋に来い?お前が来いっ!」
中のカードを読んでリーマスに教える。
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