Short storise

□Birthday
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目覚ましのベルより早く目が覚めてしまった。

今日は僕の誕生日。

きっとパパとママがプレゼントを贈ってくれてるはず。

今年は何だろう?

去年みたいに玩具じゃなければいいけど。

もう子供じゃないんだ。

プレゼントを開ける時みんなに見られるし、もっと大人っぽいものだといいな。

そぉっとベッドから出て顔を洗い、着替えていると、隣のベッドからおはよう、と声をかけられる。

「おはよう、リーマス。誕生日おめでとう」

「おはよう、ジェームズ。ありがとう。僕ちょっと早く目が覚めてしまって、起しちゃったね」

ごめん、と謝ると、ジェームズは眼鏡をかけて時計を見た。

「ほんの5分前さ。僕だって毎年誕生日の朝は早く目が覚める。わくわくするよね」

頷いて、靴ひもを結ぶ。

ジェームズも起きて、ばしゃばしゃと大きな水音を立てながら顔を洗う。

が、シリウスは起きない。

「シリウス、起きて。時間だよ」

僕はシリウスを揺り起す。

「ん……ぁあ……はよ……やすみ………」

「また寝ないっ!起きて!」

もぞもぞ動いてまた寝ようとしたシリウスをジェームズが起そうと大声をあげ、布団を剥いだ。

が、それで起きない事は知ってる。

僕は次の用意の為に、シリウスのベッドマットの周りからからシーツを引き出した。

僕達はシリウスのベッドの足元に立ち、3カウントの後、同時にシーツを力いっぱい引っ張った。

シーツはシリウスを乗せたまま、ずりり、と僕達の方に手繰り寄せられ、シリウスはベッドから落ちた。

どんっという大きな音と共に、うっ!とシリウスが呻く。

「ぃってっぇぇぇぇ………」

「また失敗しちゃったね、リーマス」

「もっと素早く引っ張ればうまく行くんじゃないかな」

シリウスの呻き声を無視して、僕達は今朝の失敗を検証する。

二人とも、もしかしたら何時かは成功するんじゃないか?と密かに思っているからだ。

「毎朝毎朝、俺でテーブルクロス引きの練習すんじゃぇぇぇぇ!!!」

腰をさすりながら、シリウスは大声をあげた。

「おはよう、シリウス。早く用意して。朝ご飯遅くなっちゃうよ」

「おはよう、シリウス。先に行っててもいいかい?」

僕がシリウスに手を貸してる間に、ジェームズは靴ひもを結ぶ。

「………ぉはよ………もっと優しく起こせよ」

僕達に文句言っても聞かない事が、そろそろ分かってきたみたいだ。

顔を洗いに行きながら呟いたシリウスの言葉に、ジェームズは呆れた様な声をあげる。

「十分優しいと思うよ?起されなかったら、君は午前中の授業を受けれないんだから」

かもしれないけどよぉ、と反論する声は控えめ。

更にジェームズは追い打ちをかける。

「具体的に”優しく”って、どういう風に?まさか”おはようのキス”して欲しい?」

………僕には無理。

でも、もし二人が(どちらか片方でも)ノーマルじゃないなら……あるかも。

「シリウス、君、そうだったの?」

僕は彼から1歩引いてみた。

顔を洗って戻って来たシリウスが目を剥いた。

「ねぇよっ!男はムリっ!!女も……可愛い子しかムリっ!!」

からかっただけなのに。

にしても、”誰でも良い訳じゃない”って言いたい訳じゃなさそう。

シリウスが着替えるのをジェームズと一緒に待つ。

「へぇ………僕はましろがいいなぁ」

ジェームズは夢見るように呟いた。

その言葉で、僕はましろが僕の頬にキスする場面を想像する。

………して欲しい。

その後”おはよう、リーマス”ってにっこり笑ってくれたら、その日1日はHAPPYな気分で過ごせるだろうな。

「俺、ワザと名前出さなかったのに、何で言っちゃう訳?」

「こういうのはいつも口にしとく方がいいんだよ。僕の隣でヘンな妄想してるヤツへの牽制になる」

ジェームズは僕のわき腹を突いた。

「君の事だよ、リーマス。今、エッチな事考えてたでしょ?」

「今、口元ニヤついてたぞ」

「ぇ?そんな事ないよ!ただ、一寸だけ……「一寸だけ?」ほっぺにキスしてくれたらなって」

「「え〜〜〜〜〜っっっ!!!」」

顔が赤くなる僕とは反対に、二人は驚きの声をあげた。

「だけ?もっとないのかい?」

もっと?

「ほら、”おはようのキス”だぜ?」

だから?

僕の顔を見た二人は揃ってため息をついた。

「リーマス、君、おこちゃますぎるよ」

「”おはようのキス”は口にするに決まってんだろ?」

シリウスの言葉にまた顔が赤くなっていく。

ましろの唇が僕の唇に?

僕は慌ててましろの唇を頭から追い出した。

「ダメだよ、僕まだ12歳になったばかりだし……」

それは、もっと大きくなってからじゃないと。

「ぁ、そうか。今日誕生日だったな。おめでとう、リーマス」

靴を履くシリウスに言われ、ありがとうを返す。

「よし。メシ行こうぜ」

「君が言わないの。それより、僕、良い事考え付いちゃったよ」

ジェームズが部屋のドアを開けながら僕をちらっと見た。

何だろ?

「何だよ?どんな事だ?」

階段を降りてジェームズは僕達に向き直った。

「今日、僕の誕生日って事にする」

「「は??」」

何言ってんだろう?

彼の誕生日は3月27日。

まだ2週間以上先だ。

呆気にとられた僕達を残して、ジェームズは談話室を抜けた。

急いで彼を追うと、ジェームズは僕達の肩に手を廻して、歩きながら話してくれた。

「僕の誕生日はもう少し先だけど、待ちきれないから今日にする」

………待ちきれないって

「で、誕生日プレゼントをましろから貰う」

「ましろはお前の誕生日知ってるのか?」

「知らないだろうね。聞かれた事ないから」

だから教えてあげるんだ、とジェームズは僕達に話す。

「俺も聞かれた事ねぇな」

「僕もだ」

ついでに言えば、僕はましろの誕生日を知らない。

「そう言えば、ましろの誕生日、いつだ?」

「知らないよ。それも今日聞けばいい」

うまく話を持って行けそうでしょ?とジェームズは話す。

………そうかも。

「で?プレゼントって?急に言っても用意してないだろうよ?」

シリウスが聞くと、ジェームズはニヤッと笑った。

「そう!そこで、僕はましろにおねだりしてみる」

「「なにを??」」

「ほっぺにキス、だよ!」

「なっにぃぃぃ!!」

シリウスは叫んだが、僕は驚きで声が出なかった。

「いい考えだと思わないかい?」

「だって、君、嘘じゃないか!」

僕は必死に言葉を探して反論する。

ジェームズの頬にましろがキスするなんて、ないっ!!

「そうだよ!なんでプレゼントがそれなんだ?」

「貰って嬉しいものを欲しがるのは間違ってないだろう?」

ジェームズは心外だ、という声を出した。

「そうだけど、今日は僕の誕生日だよ?」

「そうだよ!リーマスが言うなら分かる!なんでジェームズが言うんだ?」

「そうだよ!今日は僕の………僕が言ったらいいんだ」

「「へ??」」

二人は僕を見た。

「シリウスの言う通りだ。僕の誕生日なんだから、僕がおねだりする!」

それは間違ってないはず!

僕はジェームズの手を取ってぶんぶん振った。

「素敵なアイディアをありがとう、ジェームズ。僕、言ってみる」

「あ〜〜〜うん。僕も言いたいんだけど?」

「それはダメ。嘘吐くのは良くないよ」

「ちょ、一寸待て。俺「シリウス、君のおかげだ。僕、ましろに会いに行ってくる」………うん」

僕は二人を置いて大広間へ向かった。




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