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□禁じられた呪文
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◆ リーマス Side ◆
やっとの事でムーディーを教室から追い出しドアを閉めた途端、ハリーが質問してきた。
驚いてシリウスを見ると肩を竦め窓の外を見た。
「シリウス!君は………」
はぁ、なんて事してくれるんだ?
これじゃぁ、ムーディーを追い出した意味がないじゃないか?
教室を見回す。
みんな知りたくて、うずうずしてるって顔。
シリウス、これで今日の授業は台無しだ。
後できちんと話し合う必要があるみたいだね。
シリウスを睨みつけた後、もう一度息を吐いて、話し始める。
「“禁じられた呪文”は、魔法法律により使う事を禁じられている呪文の事だよ。三つの呪文の事を指す。一つ目は……ロン、そうだ『服従の呪文』二つ目は………ネビル?『磔の呪文』よく出来た。最後はハーマイオニー?『アバダ ケダブラ』死の呪いだ。ありがとう」
ムーディーにねじ込まれたダンブルドアも、5年生以下には早すぎる、と言っていた。
だが話し始めたなら最後まで教えなければならない類の呪文だ。
「このうちのどれか一つでも人に対して使ったらアズカバンで終身刑を受ける。これらの授業は6年生以上にしかしない事になってるんだ。何故か分かるかい?」
誰も手を上げない。
「それはね、これらの呪文がとても酷い呪文だからだよ。君達が勉強するには、まだ早すぎる。物事には順序がある。まずは基本。みんな分かったかい?」
これで引き下がるような子達じゃないのは分かってるけど、出来れば話したくない。
「はい、分かりました」
「カリスだけか。しょうがないな。シリウス、そこの棚から瓶を持って来て」
返事はカリスだけ。
後はみんな納得していない。
シリウスに持ってきたもらった瓶の中には、クモが入っている。
こんな事をしてショックを受ける子がでなければいいが………。
「一つ目の『服従の呪文』は、一時期、魔法省をてこずらせた事がある」
クモを瓶から出し手の上に載せた。
「インペリオ 服従せよ」
クモに杖を向け、呟く。
クモは手の上から糸を出しながら飛び降り、ブランコのようにゆらゆらと揺れ、宙返りをしながら机の上に飛び降りた。
側転し、ジャンプする。
教室を見回す。
………カリスが………
見ていられなくなったのか、下を向いた。
他の子はクモを見て笑ってる。
これがどんな意味を持つ事なのか分かったのは、一人だけか。
「面白いかい?これを、君達がさせられても?」
笑い声が消えた。
「完全な支配だ。私は今このクモをどうする事も出来る。窓から飛び出させることも、水に入って溺れさせる事も、自分から鳥の前に出て行くことさえ、出来る」
みんなの顔つきが変わった。
「昔、ちゃんとした大人の魔法使いがこの呪文に支配された。家族や友人を裏切った者、人を傷つけた者、人殺しとなった者。………自らの意思とは関係なく行動する。いや、意思などなくなるんだ。それでも笑っていられるかな?」
この子達に想像してもらわなければならない。
この呪文の酷さを。
支配される事の恐ろしさを。
「朝行ってきます、と家を出た君達の父親が、夕方家に帰ってきて君達に杖を向ける。何をするのか?どうしたのか?君達の質問には一切答えず、父親がまず、母親を殺す。君達の目の前で。
その後、父親は君達の方を向く。そして呪文を唱える。………父親は呪文を解かれる。彼は目の前の光景に絶望し、自らに杖を向けるんだ。そんな事が君達のご両親が若かった頃、実際に起きていたんだよ」
教室には誰もいないようだった。
しんとして、音がない。
カリスはずっと下を向いたまま。
一瞬だけ、去年のましろの姿がよぎる。
そういえば、カリスの病気は声が出なくなるんだった。
酷くなっていなければいいが。
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