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□お仕事
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昼食後、寮にカバンを置いてマントを持って、ましろを尋ねる。
打ち合わせの後そのまま先生達と一緒に到着を待つことになっている。
「ましろ、遅くなりました」
ハーマイオニーと一緒に部屋に入ると、ましろとマルフォイがいた。
「何でお前達がここに来るんだ?」
マルフォイ、それは私が聞きたいよ。
「マルフォイこそ何でここにいるの?私達は“通訳”するのよ」
ハーマイオニーの言葉にマルフォイが目を見開いた。
「ましろ!どういうことだ?僕だけじゃなかったのか?!」
キッチンにいるましろに向かって、怒っている。
「あら、言ってなかったかしら?私の代わりをハーマイオニーとドラコにお願いしたのよ」
「「聞いてないぞ/わ」」
二人の声がハモッた。
今の、ロンのお兄ちゃん達みたい。
「だって、二人とも勉強始めたばかりでしょ?一人じゃ大変かなぁって思って。他に頼める人がいなかったの。ダメだった?」
ココアを運びながら、ましろは私達にソファに座る様に言った。
マルフォイは当然のように、ましろの隣りに座っている。
まるでお母さんの横に座るみたい。
「僕は一人でも出来る。もう話せるようになった」
ましろはにっこり笑って、ハーマイオニーは?と聞いた。
「私だって一人で大丈夫よ。テキストも大体読んだし、出来るわ」
「じゃぁ、少し話してみましょう」
ましろは二人に挨拶や自己紹介などをさせた後、今日の行程をブルガリア語で話し始めた。
二人とも、ぽか〜んと口を開けて、ましろを見ている。
「カリスは分かったみたいね。私が話したことを、二人に英語で説明してくれる?」
私は頷いて、二人に話す。
「カリス、ありがとう。では、フランス語で話してみて」
私は同じ事をフランス語で話した。
「良く出来ました。やっぱりあなたに頼んだのは正解ね。さぁ二人とも、一人で出来る?」
二人とも返事できない。
「今話した内容はそんなに難しい事じゃなかったでしょ?授業や課題もあるし、二人で掛かれば何とかなるんじゃないかって思ったの。間違ってる?」
黙って下を向いてしまった。
「お願いしたのが一昨日の事だから、実はびっくりしてたの。こんな短期間で、きちんと自己紹介まで出来るなんてってね。さすが私が選んだ二人だけあるわ」
あ、二人が顔を上げた。
「もちろん校長先生方は心配要らないし、生徒さんも英語を話せる子が多いみたいだから、そんなに心配しなくてもいいの。ただ、文化の違いや言葉の行き違いで揉め事になるのを避けたいのよ。わかる?」
「つまり、緩衝材の役目をするのね?」
ハーマイオニーがやっと口を開いた。
「そうよ、ハーマイオニー。言葉が通じない事はかなりのストレスでもあるから。学校という枠を超えて、彼らが快適な生活を送れるよう力を尽くして欲しいの」
あなた達はホグワーツの代表なんですもの、と、ましろは言った。
“ホグワーツの代表”
………なんて重い響き。
「ましろ、おまじない、して下さい」
“代表”と言う言葉に、押しつぶされそう。
「あら、そんなに緊張しなくてもいいわ。でも、約束だったから………」
ましろはソファを立って私の前に来て、目を閉じるように言った。
目を閉じる。
「カリス・ローダンス。あなたは様々な言葉を操り、人々を幸せに導く事が出来る。自分を信じて」
ましろの声が耳元で素敵な言葉を紡ぐ。
額にやわらかい物が押し当てられ、抱きしめられた。
「さぁ、カリス。もう大丈夫。あなたがお父様から受け継いだ物を思う存分発揮して頂戴」
「はい。ましろ、ありがとうございます」
私がたくさんの言葉を話せるのは、家で過ごしてばかりの私にパパが教えてくれたから。
今朝届いた手紙にも、喜んでいる両親の言葉があった。
パパ、ママ、私、やってみる。
→アトガキ
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