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□『日刊預言者新聞』 No.1
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○ ドラコ ○
はぁ、また怒らせた。
何でいつもこうなんだろう?
ましろの手を引いて、雪の中を森番の小屋まで歩きながら自問自答する。
もちろん、ちょっとだけ、言いすぎた。
だけど、あれが半巨人だって事は事実。
何処の親だって………父上だって許すはずない。
ましろとは一言も話さず、小屋の前に着いた。
ましろが小屋の戸をノックする。
「ハグリッド、おはよう。散歩の途中で寄ったの。ちょっと疲れたから、休ませてちょうだい。ハグリッド!起きてる?」
何度も叩くけど、戸が開かれる様子はない。
中では森番の犬が吠えているので、起きてない訳がない。
きっと自分の出自が恥ずかしくて出て来れないんだ。
「ハグリッド!!開けてっ!…………ハグリッド、おねがっ」
ましろが急にしゃがみこんだ!
「ましろ?!どうしたんだ??」
「……お腹……イタ………冷えたん……だわ…」
ましろは手をお腹に当て、息が苦しそうだ。
周りを見るが、誰もいない。
どうしよう?
「ハグリッド!!開けろ!!ましろが大変なんだ!!早く!!」
僕は戸を力いっぱい叩いた。
「早く!!ましろが死んじゃう!!」
バッと戸が開く。
「早く中に入れて!ましろが!ましろが!」
一瞬目があったが、僕の言葉としゃがみこんだましろを見て、こりゃいかん、と抱え上げた。
「冷えたって言ってた。早く温めろ!」
「わしは今手が離せん。マルフォイ、暖炉に薪を入れろ。そこにあるもの、全部使っていい」
僕が薪を投げ込んでいる間に、ハグリッドは暖炉前にクッションを並べましろを寝かせると、ベッドから持ってきたキルトを掛けた。
「ましろ、すぐ楽になる。………寒くて腹の子がびっくりしたんじゃろ。雪の中をこんな所まで来るからこんなことになる」
ハグリッドはましろの背中をゆっくり撫でている。
「…………そうね。ちょっと失敗。でもね、あなたが起きて来ないから悪いのよ、ハグリッド」
少しだけ顔を上げ、ましろはハグリッドに笑いかける。
ハグリッドは何も言わず、ただましろの背中を撫でている。
「ねぇ、ハグリッド。私が孤児だったって事、知ってる?私は父や母が何者であるか?いつも考えてた。残念なことに、それを知る機会は………無かった。いつも何かが足りてないような、そんな気がしてた」
「でもね、ある人に言われたの。父や母でなく、お前は何者なんだって。私は『ましろ・こう』だって答えた。私が持っていたのは名前だけ。そしたらその人はこれからは『ましろ・こう』として生きろ、と教えてくれたの」
ましろの告白に僕もハグリッドも聞き入っていた。
「ハグリッド、あなたが何者であれ、私はあなたが好きよ。こうやってドアを開けて、背中を撫でてくれる優しさがあなたの本当の姿。ハグリッド、ありがとう。私とこの子を助けてくれて」
ハグリッドは泣いてた。
僕は泣いてるハグリッドと優しく微笑むましろをずっと見ていた。
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