Follow Me

□神々
2ページ/5ページ


ヘルメスが来たのだ、いずれ人ではないのだろう、と覚悟を決める。


大広間の入り口には、なるほど、尋常じゃないほど美しい女が立っている。


背が高く、長い黒髪を片方の肩から垂らしている。


年の頃は、私と同じくらい。


女は大広間を見渡し、私と目が合うと、右の眉を微かに上げた。



「彼女はアルテミス。普段ヒト前に出ないから、こっちの事をあまり知らない。僕がフォローするからね」



ヘルメスの呟きを聞きながら、アルテミスから目を逸らさないまま頭を下げる。


アルテミスは口元を上げ、こちらに向かって歩き出した。


すうぅっと動くその歩みは優雅で、やはり、ヒトではない。



「アルテミスの事は、どっかの女王様だと思ったらいい。席を立って彼女を迎えに行って」



言われたように席を立ち、アルテミスを待つ。


隣にヘルメスが立つ。



「久しいのう、フォ「セブルス」そうじゃ、セブルスになったんだのう」



アルテミスは私の前に立ち、右手を差し出す。


私は跪き、目をそらす事なく彼女の手の甲にキスをする。


ヘルメスの訂正に素直に応じる辺り、見かけより高慢な方ではないらしい。



「ほう、わらわが高慢ではない、とな。セブルス、それは褒め言葉か?」


「アルテミス、読んだらダメだよ。マナー違反だ」


「そうなのか?では、読むのは止めようかの」



あぁ、“神々”に閉心術は利かないんだった、と思いだし憂鬱になる。



「セブルス、立ち上がる事を許す」



その言葉に従い立ち上がり、アルテミスを見る。


私と同じ位置にあるその瞳は、ましろのように真っ黒で、ヒトにはない冷たさを含んでいる。



「では、その方に訊きたい事がある。セブルス、なぜましろをあのような所に閉じ込めておくのじゃ?」



は?閉じ込める?



「お言葉ですが、ましろは今、私の家にいるはずです。閉じ込めてなど………」



いない、という言葉は呑み込んだ。


アルテミスの瞳の冷たさに言葉が出なくなった、と言った方が正しいのかもしれない。



「口答えしちゃダメだってばっ」



ヘルメスの呟きが耳に届いた。



「ほう、ではその方は閉じ込めていない、と申すのか?……わらわは先程ましろを見てきた。かわいそうに、あの子は泣いておった。子が腹にいるというのに、一人であのような所に置いておく事を“閉じ込める”と言う他なかろう?」



そんな…………ましろが泣いていた?



「セブルス、その方は勘違いしておる。ましろは強い子ではない。その方がいなければ、赤子よりも弱く脆いのじゃ。それが分からんのなら、わらわが全力でその方たちを別れさせる」



息が………止まりそうだ。



「セブルス、アルテミスは大昔から君達の結婚に反対してたんだ。ましろが可愛くて止むなく認めたって経緯があってね」



だから結構怒ってるよ、と言うヘルメスの言葉に頷きたいが、射すくめられ動けないし、言葉も出ない。



「どうする?その方があそこへ行くか?ましろを呼び戻すか?それとも………別れるか?」



いや、最後のは却下だ。


ましろを失うなどあり得ない。


授業がある為ここを動けない。


よって、一番も却下。


だが、ましろを呼んで、いざ出産の時ホグワーツで対応できるのか?


聖マンゴに少しでも近いあそこを選んだのは、そういう不安があったから。


私は一体どうしたらいいのだ?





.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ