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□神々
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◆ リーマス ◆
何と美しいんだ。
あの人が現われた時、心臓が跳ね上がる。
あの人と目があった時、体中から汗が噴き出る。
髪の毛が逆立ったかと思うような衝撃。
”アルテミス”それがあの人の名。
何かセブルスと話していたが、内容など、頭に入ってこない。
その、甘い、涼やかな声。
ずっと、ずっと聞いていたい。
あの人の手に触れたセブルスが、ダンブルドアが憎らしい。
もう一度、私を見てはくれないだろうか?
だが、あの人は話が終わると優雅に振り返り、まっすぐ前を見て行ってしまった。
あぁ、もう一度、ほんの一瞬でよかったのに。
私の事を見てくれたら、私はこの命まで差し出したろうに。
アルテミス、何と美しい名。
アルテミス、何と美しい姿。
アルテミス、何と美しい声。
あぁ、胸が苦しい。
「リーマス・ルーピン!しっかりなさい!!」
パンっという破裂音の後、左の頬がジンジンと熱を持ってきた。
「………イ…タイ………」
何が起こったんだ?
「リーマス、正気に戻った?」
………ましろ?
「ましろ、何で君ホグワーツにいるの?家に帰ったよね?」
「話は後よ。まだ他にもいるの」
教員席から離れ、生徒達の席に行ってしまった。
「リーマス、お前の頬、すごい事になってるぞ」
横を見ると、シリウスがにやにやしている。
「シリウス、君に言われたくないよ」
シリウスの左頬にはくっきりと手形が残っていた。
ましろは時々、生徒の頬をパンっと叩いて、正気に戻している。
「にしても、とんでもない美人だったな」
「そうだね。いったい何者だろう?」
あんなに心臓が飛び跳ね、体から汗が噴き出し、髪の毛が逆立つような感覚は………
あれは『変身』の前兆だ!
何てことだ!
ましろの薬のおかげでしばらく体験していなかったから忘れていた!
あのままだと私は『変身』していただろうか?
あの胸の苦しさは『変身』前の痛みだったのか?
だが、私の他にも同じようにぼうっとなった者がいる。
私が病気だからああなった訳ではないだろう。
たまたま、そういう事が重なっただけだ。
「シリウス、あの人を見て………何かヘンな事なかった?」
「は?何が?」
「例えば、動悸が激しくなったり、汗が出たり………」
「う〜ん、ない、な。付いて行きたいって気分にはなったけど、そんなのは無かった」
シリウスは、水で濡らしたハンカチでひり付く頬を押えている。
「そうか……僕も冷やそうかな」
ハンカチを出していると、テーブルの向こうにましろが立った。
「リーマス、話があるの。シリウスも。後で一緒にセブの部屋へ来て」
ほとんど人の消えた大広間で、私はシリウスと顔を見合わせた。
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