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□ホグズミード
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★ セブルス ★


全く、何でこいつはこんなに憶病なんだ?


ましろに何かあったのかとノックに応じたら、入ってきたのはカルカロフ。


お前と話す事など一言もないというのに、すぐに話す、と言い張る。


授業が終わらなければ、こいつの相手など出来ない。



「君は私を避け続けている」



当たり前だ。


お前にかかわっている時間はない。


仕事もプライベートも充実し過ぎているくらいだというのに。


が、ましろの部屋まで押しかけられては面倒だ。


これ以上ましろと過ごす時間を減らされたくない。



「授業の後だ」



全く!


苛立ちのままグリフィンドールのミスに減点を言い渡す。


ましろへの伝言をマルフォイに託して、カルカロフを見た。


先程と同じように教室の隅へ行く。



「何がそんなに緊急なんだ?」



まだ数人生徒が残っている為、小さな声で話す。



「これだ」



カルカロフが左腕のローブをまくり上げ、私に見せた。



「どうだ?」



どうだって………


笑いださないようにするのが精一杯だ。



「見たか?兆候だ。これがどんどん広がって………」



「しまえ!」



笑い声にならないように頑張ったので、唸るような言い方になってしまう。


広がって、どうなるというのだ?カルカロフ?


口元がにやけないように引き締める。


ふむ、このままこいつをからかうのも楽しいかもしれない。



「君も気づいているはずだ………」



あぁ、気付いている。


お前の腕の傷が『焼印』でない事に。


このまま話し続けていては、笑い出してしまう。



「後で話そう、カルカロフ」



そろそろ我慢の限界だ。


とりあえず、目を逸らす。


と、そこにポッター(子)がしゃがみこんで何かしているのが見えた。



「ポッター、何をしてるんだ?」


「アルマジロの胆汁を拭きとっています、先生」



ポッター(子)は立ち上がり、汚れた雑巾を私に見せた。


何故いつもポッター(子)は私とカルカロフが一緒にいる時にいるのだ?


全く、父親に似て忌々しい。


ポッター(子)が教室から飛び出して行くのを見送ってから、カルカロフも追い出し、ましろの部屋へ急ぐ。


たった今の愉快な出来事を是非ましろに教えたい。







階段を上り、中庭に面した部屋の戸を叩く。



「どうぞ。あら、セブ。お話は終わったの?」



急いで中に入り鍵を掛け、ソファに座っていたましろを抱きしめる。



「ましろ、カルカロフは、バカだ」


「え?何?何の話?」


「カルカロフが私に左腕を見せた。そこには、ただの引っかき傷があった。赤い点があったから、虫刺されを自分で無意識に掻いたのだろう。で、それを、あいつは、兆候だと言ったんだ!!」



言っているそばから笑い声になってしまう。


ましろから体を離し、大声を上げ笑う。


『蛇』にも『髑髏』にも見えないそれを兆候だなんて、大バカ者だ。


しばらく笑っていたら、ましろがちょっと悲しそうな顔でいる事に気付いた。



「どうしたんだ?ましろは面白くないのか?」


「そうねぇ。面白い、と思うわ。でも本当の事を知らない彼らなら、ちょっとしたことでも疑心暗鬼になってしまうんだなって思うとかわいそうな気がしてきて………」



ましろの言葉に笑顔が凍った。


そうだ。


復活などない、という事を私は知っている。


それはとても幸運な事で………


突然『焼印』が消えた時、臆病者であればある程、驚き、喜び、疑い……


カルカロフのように引っかき傷にも怯えるのだろう。



「バカ者は私の方か………」


「いいえ、あなたは私達の道標となる人だもの。誰より賢く、誰より優しい人よ。ただ、ちょっとカルカロフに……苛立ったんだわ」



ましろは私の手を取り、撫でる。



「ねぇ、セブ。あなたは未来に生きているのに、あの人が過去に戻そうと、引き摺り込もうとするのが嫌なだけ。ヴォルの呪縛で出来た傷も月日が癒してくれるわ。もう三カ月もすれば、あの人は元の場所に帰る。セブ、その前には家族が増えるのよ」



もう大きくなりすぎて、今にもはち切れそうなお腹の中には愛しい命。



「セブ?イライラして、不要な減点しなかったでしょうね?」



ましろの声が聞こえなかった振りをして、愛しいわが子にキスをする。





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