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□はじまりの日
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☆ ましろ ☆


ノックに応えると、カリスがドアを開けた。



「あら、カリス。いらっしゃい。一人?」


「はい。さっきビルに会って、今は中庭でフラーと話しています」



ん?ビルとフラー………


はっ!!これが出会いなの??


もしかしたら私って”愛のキューピッド”?


将来結婚してくれたらそうなるわよね?


う〜〜〜楽しみ。



「それを教えに来てくれたの?ありがとう、カリス」



そのまま帰ろうとするカリスを引き止めて、ソファに促す。


今、アイとセブはお散歩中。


天気がいいから湖のそばまで行くって言ってた。


ゆっくり話せる。



「ねぇ、カリス。ホグワーツでの一年間、どうだった?」


「楽しかったです。すごく。通訳も勉強になりました。あ、『S・E・P・W』の活動で、みんなにチラシ配ったのも面白かったです」



カリスは笑顔で話してくれる。


ここ数日、ハーマイオニーは”ホグワーツでの生活は屋敷しもべがいるから快適なんだ”ってことを書いて、みんなに配り始めた。


勉強や通訳が落ち着いたからだろう。


思い出したように活動を始めたので、びっくりした。


”彼らに感謝を“という言葉がどれだけ他の子を変えるのかは分からない。


でも、心の片隅にほんの少し残れば、それだけでもいいと思う。



「良かった。それで………ライアンの事はどう?」



とたんに顔が真っ赤になる。


あぁ、好きなんだ。


この子にもちゃんと話しておかなければ………



「カリス、私の薬、あれどうして作ったか知ってる?」



カリスが赤い顔のまま首を振る。



「私はね、ある人に人生を諦めて欲しくなかったの。その人は病気の所為で色んな事を諦め、逃げてた。でも私はその人に“恋”も“結婚”も“子ども”も持って欲しかった」



カリスの顔から赤みがすぅっと引いて行く。



「私、もっと頑張るわ。病気が他の人に移らないような薬や発症しないような薬を作る。もちろん、すぐには難しいけど、絶対作る。だからあなたにも色んな事にチャレンジして欲しいの」



カリスは泣きそうな顔になった。



「でも、でも私、病気の事は………」


「言わなくてもいいんじゃない?言わなくてもあなたの事を見てる人なら気付くわ。そうねぇ………ハーマイオニーは気付いてると思う」



あの子は頭がいいだけじゃなく、勘も鋭い。


セブのように色んな事を考え合わせて真実に辿り着いてる可能性が高い。


カリスは息をのんだ。



「でも、そんな事一言も………」


「えぇ。私にも何も言ってきてない。でも、あの子はそういう子なの。本質を見る目を持っている」



カリスは黙ってしまう。



「カリス、もっと自信を持って。病気だったからあなたはたくさんの語学力を手に入れた。病気だったから4年から編入し、たくさんの友達が出来た。病気だったから誰にでも優しく出来る。今のあなたは病気があったから出来たあなたなの」



私は立ち上がり、カリスの隣に座った。



「カリス、私やみんなが大好きなあなたは、病気を持ち、病気と闘って出来たあなたなの。ゆっくりでいい。もっと自分を好きになって、カリス」



泣きだしたカリスを抱きしめ、思う存分泣いてもらった。






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