女王様と俺
□穏やかな日々
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ドアがばたんと閉まるのを呆然と見る。
「逃げられたか。まぁいい。時間はいくらでもある」
ムーディーは椅子に体を預けた。
「なぁ、さっきの本当か?」
「あ?娘の事か?」
頷くと、ムーディーはニヤニヤして話しだした。
「お前の従弟にマグルと結婚したのがおるだろう?」
「あぁ。ドロメダだ。俺の事を理解してくれた、姉さんみたいな人だ」
「その娘が今、『闇払い』をしておる。わしが面倒を見ていた」
「ってことは、ドーラか?」
俺が最後に見た時は………ホグワーツに入学してなかった。
最近では手紙がちょくちょく来るようになったが………そういえば。
「ドーラの差し金か?」
手紙では俺と共にリーマスの事も色々聞いていた。
一番多かった質問は………リーマスに好きな人いないの?
言葉は濁してあったが、そういう事だ。
知らん、と答えてきたが、ここに来て人を使いだしたか?
「まさか。あの子はそんな事せんよ。わしが知りたかったんじゃ。リーマスの”人となり”をな。ドーラが惚れるのも無理はない。いい男だ」
「二人は何処で知り合ったんだ?」
「お前さんがきっかけだろう?夏休み、ドーラの家に遊びに行った事があったそうじゃないか?」
………あぁっ!
「卒業前にマグルの生活を体験しに行ったんだ。テッドも来いって言ってくれて………ジェームズとリーマス、ピーターも一緒だったな」
森の中で一日中遊びまくった。
あの時ドーラはまだ5つくらいじゃなかったか?
「その時、リーマスだけがドーラの相手をしてくれたそうだ」
ムーディーは”だけ”にアクセントを置いた。
確かに。
俺には遊んでやった記憶はない。
「それが初恋なんだそうでな。他の男には目もくれず、ひたすらリーマスを見てたらしい」
ホグワーツに来る前は何度かデートもしてもろうとった、と言うムーディー。
「やけに詳しいな。ドーラの追っかけか?」
「娘だ、と言うとるだろう?ヘンな男に引っかかって泣かされたりしたらいかんからな」
………父親だ。
いや、熱狂的なファンか?
「で、ムーディーのお許しが出たって訳だ」
「まぁ、わしが勝手にやってる事だがな。人を見る目はあるつもりだ」
「あぁ、リーマスはいい男だ。きっとドーラの事を大事にするだろうな」
「シリウス。お前さん、二人のキューピッドにならんか?」
「嫌だ。二人ともいい大人なんだ。周りがやいやい言ってもいい結果になるとは思わない。見守ってやるのが一番だ」
こんなおっさんだけでも面倒だろうに、俺が間に入ったら、ややこしくなること間違いなし、だ。
ん?これを利用できないか?
「でも、協力はしてやる。週末の見張り、俺達が交代でやればリーマスとドーラのデートのセッティング、やりやすくなるだろ?」
俺も遊びに行きやすい。
「まぁ、ムーディーの休みはなくなるけどな」
ムーディーは腕組みし、しばらく考えてニヤッと笑った。
「お前さんの為にもなる、か?いいだろう。若いもんの恋の手伝いをするのも楽しかろうて」
ムーディーの差し出した手をがしっと握り、その週末から俺とリーマスの交代で休暇を取る事になった。
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