女王様と俺

□春
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「とにかく、これでカリスは大丈夫って事だね。後はハリーか」


「確実ではないが、彼女がミスター.レイウッドと付き合いだしてからは無事だったので………ポッターはかなり手こずっているらしいな」



スネイプが自分のグラスに酒を注ぎ、口にする。


………お前は飲んでもいいのか?



「結構引越してる人が多いみたいだね。マグルと同じ生活してたりして………中には杖を捨てた人もいるらしいよ」



『死喰い人』としての”過去”から逃げる為だろう。


実際、ヴォルデモートが滅亡したのか、本当の所は誰にも分からない事。


だからこそ、あのお祭り騒ぎの後も逃げ回っている連中が多いって訳だ。


スネイプがこうも堂々としている方が不思議で、だからこそ”過去”を疑われないのかもしれない。


それにしても………


杖を使わない事は出来る。


が、杖のない生活はムリだ。



「そういう生き方もあるのか。俺には想像出来ないな」


「私もそうだね。セブルス、ましろはマグル式?」


「両方だ。効率か手を掛けるか、その時々で使い分けているようだ。ただホグワーツではその機会もあまりないし、常時リントがいるからな」


「ふ〜〜ん………シリウスの彼女は?」


「はぃ?俺は………分からん」



ミシェルは………一緒に料理をした時は、マグル式だった。


が、正直それほど一緒にいる訳ではないから分からない。


それにミシェルのとこにも屋敷しもべがいそうだ。



「ブラックの彼女に屋敷しもべは付いてないのか?」


「さぁ。って、何故その質問?」


「なんとなく。お前が惚れた女だ。そこら辺の女とは違うかと。そういえばルーピンの彼女は『闇払い』だそうだな」



スネイプはリーマスに矛先を向けた。



「………ムーディーだね?まだ付き合ってる訳じゃないんだよ。どこまで言いふらしてるんだか」



はぁ、と息を吐き、リーマスは頭を抱えた。



「付き合う気が無いなら、デートなどしない方がいい。気を持たせるのは失礼だ」


「セブルス、君に恋愛指南されるとは思ってもなかったよ。昔は鈍感で可愛かったのに」


「いつの話だ?我輩に相談してくるムーディーの身にもなってやれ」



ムーディー、手当たりしだいだな。



「はいはい。そろそろ夕食に行こうか?」



リーマスは旗色が悪くなったと見たのか、立ちあがった。



「シリウス、後でまた寄るから荷物置かせといて」


「我輩は部屋へ戻る」



スネイプは美味かった、と言い残してさっさと部屋を出ていった。



「たまには男だけで飲むのも悪くないね」


「嫌だ。俺は女と飲みたい」



例えば、ミシェルとか、ミシェルとか、ミシェルと。



「そんなに言わなくても。彼女は飲める人?」


「あぁ。かなり強い」



リーマスはくすくす笑う。



「君が言うくらいだ。相当と見た。セブルスは強いのに、ましろは受け付けないそうだよ」


「ましろは食ってりゃ幸せな奴だから丁度いい組み合わせじゃないか?」



片方が食べて、片方が飲んで。



「あぁ!そういう考え方もあるのか。美味しい料理には美味しいお酒って思ってた。片方だと、損したような気がしてたんだ」



大広間について、席に座る。



「ホグワーツでも料理が美味しいんだから、一緒にお酒があったらなって思う事もある」


「あ〜、俺、食ってる時は少しでいい。ここで食事を終えて、部屋で飲むっていうの、結構合ってる」



その為に、何本かボトルを置いてある。



「君の部屋に行けば、高そうなウィスキーやブランデーがある事が分かったよ。またご馳走してね」



さっきの飲みっぷりを思い出す。



「嫌だ。味わい方を知らない奴に飲ませる酒はない」


「美味しいお酒に美味しいチョコレート。最高の組み合わせだよ?」



話にならない。



「そんな奴はジンでいい。っていうか、飲むな。紅茶飲んでろよ」


「飲んでるよ。君は知らないだろうが、私は茶葉にもこだわってるんだ」


「も?他は?」


「チョコレート、クッキー、スコーン「分かった。もういい」え〜?クッキーやスコーンは手作りだよ?」


「手作りぃ?リーマスが?」


「そうだよ。セブルスも自分で焼く事があるらしいよ。厨房の屋敷しもべに聞いた」



何だ?こいつら。


そんな事、普通やるか?


はっ!共通点があるっっ!!


紅茶好きで、この年まで独身だ。(あ、スネイプは結婚したが)


一人暮らし歴も長い。


俺もアズカバンに入ってなかったら、自分で何でもするようになってたのか?


………考えられん。


俺は多分、結婚してるな。


もちろん、ミシェルと。


って、俺10年前は26歳だが、ミシェルは8歳。


ダメだ。


犯罪だ。


っていうか、俺、見向きもしてない。


やっぱり今、この時じゃないといけなかったのか。


自分の作るクッキーの隠し味は、と話し続けるリーマスの言葉を、俺も同類だったかも、と思いつつ聞いた。




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