女王様と俺

□春
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学校中のみんなが祈る中、ましろが出産したのは3月の終わり。


そりゃもう大騒ぎで、あんなに学校中が一体になった事はなかったんじゃないか?と思う。


アイは可愛くてきれいな赤ちゃんだったが余りに小さくて、抱きあげる事はおろか指先で触れる事も恐かった。


スネイプは父親だし、ジェームズは経験者なんで簡単に抱くのは分かるが、リーマスが抱きあげ、あやすのを見た時は驚いた。



「リーマス、それ、壊れないか?」


「シリウス、アイはモノじゃないわ」



ましろのチェックが入る。



「そうだよ。軽くて可愛いよ?君も抱っこしてみれば?」


「いやっ、いい。遠慮しとく」


「あら、簡単よ。ね、セブルス」



リリーの問いにスネイプは眉間の皺を深くして頷いた。


………アイを抱くな、と言いたいらしい。


いや、触るな、か?



「リーマス、次、僕に変わってよ。何だか懐かしいね、リリー。ハリーが生まれた時の事、思い出さない?」


「そうねぇ。あの頃から貴方にそっくりで、将来モテ過ぎて困っちゃうわって言ってたわね」



………こいつら夫婦も、いちゃいちゃ野郎だったな。


ジェームズの腕の中に収まっているアイを見ながら夫婦でハリーの話。


俺もそのうち自分の子を抱く時が来るんだろうか?


その時の為に練習しとくか?



「ジェームズ、ちょっと、その…やっぱり……俺もいいか?」



ジェームズはニヤニヤしながら俺にアイを抱かせてくれた。


落としたら恐いから、俺はソファに座ったまま。



「左腕で頭を支えるんだよ。で、そのまま体を持つ感じ。右手は体の下に入れて………そう。体をくっつけてあげると落ち着くんだ」



うぉっ!軽いっっ!!


予想していたよりも軽くて、手が浮きあがりそうな感覚。



「もっと、ずっしり来るかと思った」



みんなくすくす笑っている。



「じゃ、しばらく抱っこしといてね」


「あぁ、いいぞ。こんなん、何時間でも楽勝だ」



………と思ったのは間違いだった、と気付くのに、そう時間はかからなかった。


手が、イタイ。


体勢変えたらアイが泣いてしまいそうな気がするから動けないのが、ネックだった。


赤ちゃんって、こんなに重くなるのか?



「なぁ、そろそろ代わってくんない?」


「え?まだ5分くらいしか経ってないわよ?」



ましろの答に呆然とする。


確実に30分は抱っこしてた気分だ。



「シリウス、赤ちゃんって可愛いけど、大変でしょ?貴方の奥さんになる人も大変な思いをするわ。子どもが出来たら、二人で協力してね?」



ましろに促され、スネイプが俺の腕からアイを抱きあげ、窓辺に連れて行った。



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