女王様と俺
□春
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イースター休暇のフランクの結婚式は、迷ったが出席する事にした。
そろそろミシェルの婚約者は俺だ、と紹介されてもいいんじゃないか?と、ミシェルと話し合った結果だ。
但し、紹介するのは、ごく近しい親族限定。
余り広まると、俺の夜の散歩もミシェルのホグワーツ訪問もやりにくくなるから。
フランクの式は近くの教会でやり、パーティーは家でやるそうだ。
ホリ−次期当主の結婚式。
ロイの時はそりゃもう盛大なものだった。
今度も凄い事になるだろうとは予想がついている。
教会で親族に紹介された後は、ロイから”かん口令”が出る。
パーティーは変身して初めだけ出て、後はミシェルの部屋で過ごす。
俺は当日の朝、ミシェルを迎えに行き、一旦家に行く事になった。
その後、ロイ達と一緒に教会へ向かう。
新調したドレスローブを持って、ホグワーツの門を出る。
姿くらましして、ミシェルの部屋へ。
「ミシェル、おはよう。用意は………ミシェル?」
ミシェルはまだベッドの中にいた。
近づくと、うっすら目を開ける。
「ぁ、……し………りぅ……す」
顔が赤い。
息が荒い。
額を触れば確実に熱い。
「ミシェル、熱がある。病院に行こう。ロイにはふくろうを送る」
「ぃや……ぃかな……くちゃ……」
ミシェルは起き上がろうとする。
「ダメだ。こんなんで式になんて出れないだろう?」
「…でも……しょうか……い…」
「そんなのはどうでもいい。ミシェルが大事だ。俺、間違ってないよな?」
間違ってても、病院へは連れていくけど。
「わ……かった…………いえに……しゅ…じい…」
「あぁ、ホームドクターがいるのか?家に行けば診てもらえるんだな?」
ミシェルが頷く。
俺はミシェルを抱きあげ、ローブでくるみ、二人姿くらましした。
出た所は庭のブランコの前。
とっさに思い出したのがこことはな。
ミシェルとの思い出の場所に浸る事なく、バルコニーから家の中へ。
「ロイ!いるか?!俺だっ!」
屋敷中がバタバタしていたので、注意を向ける為に大声を出す。
「これはこれは、申し訳ございません」
慌てた様子で、執事長が出てきた。
「久しぶりだな。俺が分かるか?」
「はい。もちろんでございます。ブラック様、ミシェル様は………お熱のようですね?こちらへ」
執事長が俺を促し、階段を上る。
「申し訳ございません。本日は手が空いている者が少なくて」
「分かっている。こんな時に来て済まなかった。ホームドクターがいる、とミシェルが言うのでな」
「はい。すぐに」
執事長は一室のドアを開け中に促すと、すぐにドアを閉めた。
ベッドにミシェルを横たえる。
「ミシェル、大丈夫か?すぐに癒者が来るらしい」
ミシェルは頷き、荒い息を吐く。
少しでも楽にならないか?とハンカチを魔法で濡らし、額に乗せた。
ばたばたと廊下を走る音がする。
ノックもなしにドアが開き、ロイとカメリアが入ってくる。
今ここに来て欲しいのは、お前たちじゃないだろ?
「ミシェル、しっかり!」
「ミシェル、もう大丈夫よ」
二人は俺を押しのけ、ミシェルを覗き込む。
また、バタバタと足音がして、やっと癒者が来た。
後ろから執事長が入ってくる。
「ロイ様、カメリア様、お支度は………後に?」
「「もちろんっ!!」」
執事長は二人の剣幕に押し切られ、黙ってしまった。
「お二人とも、少々離れて頂かないと、ミシェル様の治療が出来ません」
癒者に言われ、しぶしぶ離れ、俺を見た。
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