女王様と俺
□ホテル
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………ミシェルか?
覗き穴に目をやると、さっきのホテルマン。
呼んでないがな。
また届け物か?とドアを開けると、がばっと抱きつかれた。
余りの勢いによろけて後ろに下がるが、何とか転ばずにすんだ。
「シリウスっ!!」
「ミシェル?」
ドアがばたん、と閉じる。
「見えたのはホテルマンだったぞ?」
「案内してもらった後、隠れてたのよ。びっくりした?」
ミシェルは楽しそうに俺を覗き込む。
「びっくりし過ぎて、抱きしめる事も忘れてた」
久しぶりに会うミシェルは、明らかにはしゃいでいた。
裁判に勝った為なのか、俺に会った為なのか、知りたい。
ぎゅっと抱きしめると、ミシェルが幸せそうな顔になった。
俺と会えたからだな。
「ミシェル、勝利、おめでとう」
「もう!そこなの?久しぶりに二人なのに??」
不満げな顔のミシェルの顎に手を掛け、上を向かせる。
「二人の時間はここからだ」
口付けを落とそうとすると、ノック。
………何だよ?
覗き穴の向こうには同じホテルマン。
やっぱり、お前しかいないよな?
ドアを開けると、コルク抜きを見せた。
「コルクを抜いて、サービスするのが私の仕事でございます」
………察しろよっ!!
俺の腰には後ろからミシェルの手が回っている。
「あ〜〜こういう状況なんで、ワインは後からにしたい。それに………それを貸してもらえば、自分で出来るんだが」
「申し訳ございません。これは私の宝物でございます。お客様にお貸しする事は出来かねます」
コルク抜きを指差す俺の目の前からさっと隠した。
「………分かった。後で呼ぶから、今は消えてくれ」
「かしこまりました」
ホテルマンがドアを出ようとした。
「あぁ、さっきのコーヒー、美味かったよ。「えっ?フランクがコーヒー淹れたの?」………フランク?」
ミシェルが背中で頷いた。
まさか?
俺は目の前に立つホテルマンをじっと見た。
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