女王様と俺

□事件
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その姿を呆然と見送るリーマスの左頬には、くっきりと赤い手形がある。


ましろ、思いっきりやりすぎだ。



「リーマス、お前の頬、すごい事になってるぞ」



にやにやしながら教えてやると、ちょっと睨みつけられた。



「シリウス、君に言われたくないよ」



なるほど。


俺の頬にも同じものがあるって事。


ましろは時々、生徒の頬をパンっと叩いて、正気に戻している。


俺だけが変な事になってた訳じゃない、か。



「にしても、とんでもない美人だったな」


「そうだね。いったい何者だろう?」



そう言うとリーマスは何か考え始めた。


何者か分からんが、もう二度と会いたくない美人ではあるな。


さっきの俺は何もかも放り出してしまいたくなるほど、あの女を欲した。


そばにいるだけでいい、なんて普段の俺なら絶対に思わない。


見ているだけでいい、なんて事も。


俺は愛する者に触れていたいし、愛されたいと思う。


自分が自分じゃなくなるなんて、二度とごめんだ。


ひり付く頬をどうにかしたくて、ハンカチを出し、濡らして当てる。


何もしないよりはマシ、と言ったところだ。



「シリウス、あの人を見て………何かヘンな事なかった?」


「は?何が?」



自分が無くなる事か?



「例えば、動悸が激しくなったり、汗が出たり………」


「う〜ん、ない、な。付いて行きたいって気分にはなったけど、そんなのは無かった」


「そうか……僕も冷やそうかな」



リーマスはそんな事に?


ハンカチを出しているリーマスを見る。


と、テーブルの向こうにましろが立った。



「リーマス、話があるの。シリウスも。後で一緒にセブの部屋へ来て」



ほとんど人の消えた大広間で、俺はリーマスと顔を見合わせた。





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