女王様と俺
□事件
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ましろの部屋で聞いたのは、さっきの美人の正体。
ましろの本当の叔母で”特殊能力”の持ち主。
俺達は『心の闇を暴きだす』という力を持つ彼女の”虜(とりこ)”になりたがったらしい。
「シリウス、あなたは12年間、闇の中で復讐だけを考えてた。リーマス、あなたは病気という闇の中にいる」
何だかよくは分からんが、”闇の中に生きていた”という言葉に頷くしかない。
俺が復讐を考えなくなって、まだ8カ月が過ぎたくらい。
それまでの12年間に比べたら、ほんのちょっとだ。
それを思うと”過去”は確実に俺の中にあるんだ、とやるせなくなると同時に、この8カ月が充実した素晴らしい日々だった、と幸せな気分になる。
だが、やっぱり納得いかない。
「なぁ、ましろ。心の中を曝け出す魔力なんかホントにあるのか?聞いた事ないぞ?」
似ているのは『開心術』だろうが、あれは対象者の心の中を見る魔法。
対象者が”虜”になるなんて事はない。
ましろは苦笑しながら説明してくれた。
「えぇ。私の癒しの風も他の人にはない力。代々、特殊能力を持っている人を多く出しているらしいの。人前に出ないからみんな知らないし、知らせる気もない。私が人前に出てる事は彼らからすればヘンなのよ」
ましろの癒しの風、か。
確かに聞いた事はない。
ん?
いや、つい最近、聞いたぞ?
ホリーが出会った”癒しの天使”だ。
彼女も普通ではない力を持っていた。
”特殊な魔力”で人々を癒す。
ましろは彼女の家系なのか?
「あの小さな男の子も?あの子も何かその、特殊能力があるのかい?」
リーマスの言葉で考えが中断された。
あぁ、あの子どもも不思議だ。
「う〜あの子は変身が上手。リーマス、この前の学年末パーティに悪ふざけした男の人がいたでしょ?あれ、あの子」
「えぇっ!!だって、あんな完璧な変身をあんな小さな子が?」
あれか?
俺は見てないが、ましろの”大事な人の偽物”が大広間に出た事は知っている。
そいつがましろとスネイプが結婚してるって公言して、大騒ぎになった。
………あの時、そいつに先生達の杖が盗られたんじゃなかったか?
それもあの子どもが?
ましろが大きく頷いた。
”特殊能力”=”強い魔力”という事?
ましろも強い魔力を持っている。
恐らく、ダンブルドアの次くらいには。
”強い魔力”が各人の特性と相まって”特殊能力”として表れていると考えるのが妥当か………
しかし”特殊能力”って、そんなに色々あるものなのか?
その強い力の為に人前に出ないって、それ、”特殊能力”で済ませていいものなのか?
いっそ”呪い”と言ってくれた方がすっきりするぞ?
俺がうだうだ考えてる間に、ダンブルドアが、ましろはホグワーツに帰ってくる事になった、と話している。
………そうだ。
あの女、ダンブルドアが頭を下げるほどの力の持ち主だ。
あの子どもにも丁寧な対応をしていた事も思い出す。
”魔力”だけでなく”立場”も格段に違う。
ましろの家は実はとんでもない所なのかもしれない。
例えば………王族?
でも、女王じゃないって言ってたな。
分からん。
「セブ?私泣いてなかったよ。心配そうだったのはアルテミスの所為?」
目の前では、ましろがスネイプの手を取っている。
「ましろと離れて暮らすのはどうもいかん。彼女のおかげでお前と一緒に過す事が出来るなら、大いに感謝しよう」
何だこれ?
スネイプの顔がましろに近づく。
マジか?
「ストップ!!いちゃつくのは俺達が出てった後にしてくれ!」
何が悲しくてこいつらのキスシーンなんか見せられなくちゃなんないんだ?
みんなの笑いの中、俺は一人部屋を出た。
こんな時はミシェルのとこに行って、可愛い顔を見るに限る。
見回りをさくっと済ませ、愛しい彼女に会いに行った。
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