Short storise

□Birthday
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スリザリンのいつもの席に、ましろはいなかった。

スネイプが一人で座っている。

僕はスネイプに駆け寄った。

「おはよう、スネイプ。ましろは?」

「おはよう、ルーピン。ましろはまだ来てない」

食事の手を止めて僕をちらっと見たスネイプはそれだけ言うと、また手を動かし始めた。

なんだ、残念。

勢いのまま言ってしまおうと思っていたのに。

僕はスネイプとの間に一人分の場所を開けて座った。

こうなったら、ここで待ってて、ましろが来たらすぐに言おう。

「ルーピン、珍しいな。一人か?」

「うん。今日は特別な日だから置いてきた」

「置いて行かれてないよ」

「俺達も言ってみる事にした」

そう言って、二人が向かい側に座る。

「誕生日じゃなくてもいいんじゃないかって話したんだ」

嘘は良くない、って言おうとしたらジェームズが付け加えた。

何でもアリにしちゃったんだ………

「誕生日?」

スネイプが僕を見る。

「うん。今日、僕の誕生日なんだよ。で、ましろに「止めろ」は?」

スネイプはフォークを置いて僕に向き直った。

「ましろの前で誕生日の話はするな」

………なんで?

「スネイプ、”誕生日”だよ?まだ年齢の事を気にする年でもないし、そもそも年を聞く訳じゃない」

ジェームズはスネイプに言った。

「じゃ、どうしたいんだ?自分の誕生日を言ったら次はましろに聞くつもりだろう?頼むから、止めてくれ」

僕達はスネイプの真剣な表情に驚くしかなかった。

「どうしてって聞いても良いよね?」

ジェームズの言葉にスネイプは眉根を顰め、辛そうな顔をした。

まるで、嫌な事を思い出したみたいに。

スネイプがクイっと手を動かしたので、僕達は顔を寄せた。

「僕の誕生日に、ましろに聞いた事がある。誕生日はいつだ?と。ましろは誕生日はない、と言った」

「「「は???」」」

ないってどういう事?

誕生日って、みんなにあるモノでしょ?

この世に生まれた日だよ?

「勿論、本当はあるはずだ。どういう事情か分からないが、ましろは誕生日が好きじゃないんだ。だから、ない、といったんだと思う」

スネイプは一旦言葉を切り、僕達に懇願する様な声を出した。

「だから頼む。誕生日の話はしないでくれ。あんな傷付いた顔のましろを見るのは、もうたくさんだ」

自分の誕生日が嫌い?

そんな事ってあるのかな?

「スネイプ、嘘吐くなよ。自分の誕生日がないなんて言うか?嫌いってあるか?」

シリウスがテーブル越しに詰め寄った。

「ホントはお前一人でましろの誕生日祝おうって思ってんじゃないのか?知ってんだろ?ましろの誕生日。言えよ」

「違う。僕は本当の事を言っている」

「ちょっと、止めなよ。こんなとこでケンカ始めないでよ」

ジェームズがシリウスをなだめようとする。

背後でくすくすと笑い声が聞こえた。

「おはよう、みんな。朝から元気だねぇ」

振り向くと、ましろが立っていた。

僕達は慌てて離れ、きちんと座る。

「………おはよう、ましろ。いつから?」

スネイプが少し動いてましろの場所を作った。

ましろはそこに座って、お皿を取る。

「ん〜〜っと、”誕生日はない”辺りから」

僕達は動けなかった。

色々聞きたいけど、スネイプが言った事が引っかかっている。

ましろはソーセージとサラダをよそい、自分の前に置いた。

「イッタダッキマ〜〜ス………うん、今日も美味しいねぇ」

「もっと食べないと昼までもたないんじゃないか?」

「これでいいんだよ。”おやつ”入んなくなるからね。セブルス、トーストとって」

ましろはパクパク食べ始めた。

「あれ?みんなも早く食べないと授業遅れちゃうよ?」

そう言われて、向かい側の二人は自分の皿に料理をよそい始めた。

僕もフォークを取る。

そのまま無言で手と口を動かした。

「で………誕生日の件なんだけど」

皿の上がほとんどなくなった頃、ましろが呟いた。

僕達は手を止めた。

ましろはグサっとソーセージを突き刺した。

「セブルスは嘘吐いてないよ。そう言った、と思う。私の誕生日知りたいなら………セブルス、何時にしたんだったっけ?」

「1月9日」

「ぁ、それそれ。その日、私の誕生日。プレゼント要らない。用意されてても受け取らない。突き返す」

そう言ってソーセージを口に入れた。

僕は美味しそうに口を動かすましろを呆然と見る。

「ましろ………聞いても良いかな?」

ジェームズが恐る恐るといった感じで口を開く。

「ポッター、さっき「良いよ、セブルス。今日は気分がいいからね。ジェームズ、何?」」

ましろはスネイプを制してジェームズに先を促した。

「何でプレゼントはダメなんだい?」

ましろはニヤッと笑った。

「そっちか………貰ったら返さないといけないでしょ?で、私、他人の誕生日にも興味ないから覚えないんだよね。それで……分かるでしょ?」

「あ〜〜つまり、ましろがプレゼント用意出来ないから、貰わない、と?」

ジェームズの言葉にましろは頷いた。

「そういう訳。”おめでとう”は受け付けるから」

そう言ってトーストを口に入れた。

誕生日に興味がないって………そんな事ある?

その時、ふくろうが大広間に飛び込んできた。


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