Loving You 2
□5年生
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大広間での組み分けや宴会が終わり、僕達は寮に戻った。
宴会の間は勿論、大広間を出てからもみんなの関心はディメンダーとシリウス・ブラックの事。
談話室のあちこちで、汽車の中に現れたディメンダーの事を話している。
「ポッターが倒れたらしいぞ」
部屋のドアを閉める間際に聞こえた誰かの言葉に、マイクが同調した。
「僕だって倒れたかったよ。ガラス越しに、ちらっと見ただけで凍え死にそうだったんだから、面と向かったらって考えただけで………」
ううっ、とマイクは震えた。
「そうなのか?俺も見れば良かった」
ケルヴィンは残念そうにつぶやく。
「何言ってるんだよ。見なくて正解。ねぇ、セドリック」
「そうだね………出来れば二度と経験したくないよ」
あの時、ほんの一瞬見ただけなのに、僕は心が冷えるのが分かった。
今まで感じていた幸せな気分は全部嘘で、この先一生何の楽しみもなく生きて行かなければならない様な気分。
それを吹き飛ばしてくれたのは、ましろの言葉と温もり。
ましろを抱きしめてたのはほとんど偶然だったけど、彼女がいてくれて本当に良かった、と思った。
同時に、彼女が見なくて良かった、とも。
「それにしても、新しい『DADA』の先生は……何て言うか………パッとしないね」
マイクがこの話題はもうしたくない、とでも言うように強引に変えた。
「ルーピン、だったか?」
「そう。遠目でしか見てないけど………随分くたびれたローブだったよ」
「どの先生も一番良い服を着るって事を知らなかったんじゃないのか?」
「ハグリッドの服、凄かったねぇ」
マイクがくすくす笑う。
「あれ、何の毛皮だろうな。紫色のジャケットの上に着てたやつ。見たことない位オレンジだったぜ」
「パフスケインよりよっぽど『魔法生物』らしかったよ」
「マイク、言い過ぎだよ。少なくともハグリッドは……人の言葉が分かるからね」
僕のジョークに二人は大笑いした。
翌朝、僕達が大広間に行くと、ましろはジョンソン達と一緒に朝食を取っていた。
僕が入ってきた事に気付いたウィーズリーの片方が何か話すと、ましろが振り向いた。
笑顔で手を振るのに振り返し、ハッフルパフの席に着く。
「スリザリンのテーブルが盛り上がってるな」
「下らない。ポッターの事を笑ってるんだ」
僕達はバカ騒ぎしてる彼らを横目で見ながら離れた場所に座った。
「マルフォイにとって、ポッターはどうしても気になる存在らしいな」
「あんな事をするなんて、子どもっぽいね」
「それを見て笑ってるスリザリンの連中もね」
僕達は呆れながら食事を始めた。
しばらくして、騒ぎの声が大きくなった。
見ると、ポッター達が入ってきた所だった。
女の子の一人がディメンダーの真似をした。
僕達はくすくす笑った。
「ある意味……ディメンダーよりも怖いかも」
マイクの言葉にケルヴィンが声を上げて笑う。
「もう!あなた達までハリーを笑ってるの?」
気付けばましろが僕達のすぐそばに立っていた。
僕達は急いで頭を振る。
「違うよ。あの女の子が面白くて」
僕はそっと指を指した。
ましろは僕の隣に座って指の先を見て口元を歪めた。
が、すぐに顔を元に戻した。
「いくらなんでもそれは失礼だよ。女の子の顔を笑っちゃダメ」
「僕は”顔”だ何て一言も言ってないよ。スノウは酷いなぁ」
ましろは、あっ!と言って顔を赤らめた。
「ま、確かに人というよりは……パグ犬だな」
ケルヴィンが声を顰める。
僕達は一瞬の間をおいて笑った。
「スノウ、食事は終わったのかい?」
「うん。おはようを言いに来ただけ」
ましろはそう言って大広間を見回し、誰かを見付けたのか、席を立った。
「ごめん、私、行かなくちゃ。またね、セディ」
「うん」
「ケルヴィン、今日の放課後は先生のトコに行くから勉強は出来ないよ。マイクもね」
「おう。都合のいい時だけでいい」
「スノウもがんばってね」
ましろは手を振って教員席の方に行った。
去年から続いているケルヴィンとの勉強会に、OWL試験を控えた今年からマイクも参加する事になった。
夏休みの新聞社訪問はマイクを奮い立たせたらしい。
僕もクディッチがない時は参加する事にしている。
「ぁ、言い忘れた」
「何を?」
「僕の新しい役割」
僕はましろを探した。
ましろは教員席でハグリッドと話している。
なんだか深刻そうだ。
「ま、いいや。何時でも話せるしね」
手紙じゃダメだ。
直接伝えたら……どんな顔をするのか見てみたい。
「そろそろ授業に行かないと。新学期早々の授業遅れたらフリットウィックが泣きだすぜ」
「それで済めばいいけど。OWL受けさせない、何て言われたら大変だ」
僕達が急いで大広間を出る時も、ましろはハグリッドに何かを懸命に話していた。
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