Loving You 3

□ホグワーツ
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組み分けとそれに続く宴会が終わり、僕達は部屋に行った。

ケルヴィンは城の中を見周りに出掛け(首席の仕事)マイクと二人で休む用意をする。


「ねぇ、セドリック。僕、一つ気付いたんだけど」


マイクがパジャマに着替えてベッドに座った。

僕は日記を書きながら返事をした。


「なに?」

「グリフィンドールの連中、来なかったね。ウィーズリーズは絶対何か言いに来ると思ってたのに」


夏休みの計画がなくなった事は理解しても、今後の事を相談しに来ると思っていた、とマイクは続けた。


「そうだね………でも来られても計画なんかないし、そこで揉めても面倒だから、来てくれなくて正解だよ」

「そうか……そうだね。おやすみ、セドリック」

「うん。おやすみ、マイク」


マイクはカーテンを引いた。

僕は日記の続きを書きながら小さく息を吐いた。

僕はウィーズリー達が”何もしない”僕を詰るだろう、と思っている。

そのこと自体は別に構わない。

ただ、揉めているのをあの女に見られるのは好ましくない。

アンブリッジ。

ダンブルドアのスピーチを遮り、魔法省がホグワーツに干渉する事を堂々と宣言した。

ほんの少しでも僕が問題を起こせば、魔法省は喜んで僕をホグワーツから追い出すだろう。

グレーゾーンの僕を歓迎してはいないだろうから。

だが、今追い出されては、ポッターの動向を見続ける事が出来なくなる。

今年、ポッターが動かない場合は闇払いになろう、と思っている。

彼らは”闇”の事を追っているのだから、ましろを見付けるのに、かなり有効な手だと思う。

魔法省に就職するにはホグワーツを卒業しなければならない。

後一年で今よりも強くなって、”闇”と戦えるだけの力を付ける事が、今の僕に出来る事だと思う。

だからこの一年。

僕は目立たず暮さなければならない。

日記を閉じて、羊皮紙を出した。

昨日書いたばかりだから書くのは止めよう、と思っていたけど、教えたい事がたくさんある。

僕は羽根ペンにインクを付け、ましろに向けて手紙を書き始めた。

いつものように質問を書き、その下に今までと違う組み分け帽の歌った歌の事や、ハグリッドの代りに来た新しい先生の事を書いた。

勿論、アンブリッジの事も。

そして………昨日の夜の、夢の事を書いた。


”君の夢を見たよ。とても素敵な夢だ。僕達は思う存分抱き締め合って、お互いの愛を確かめた。とても幸せで、全てが満ち足りていた。

あの夢を現実にする為に、僕は君を取り戻すよ。ましろ、君を愛してる”


僕は時計を見て手紙をベッドに持って入った。

まだ送るには早すぎる。

ケルヴィンが帰って来ないのが気になるが、これが首席の仕事、というモノなんだろう。

勉強と首席、両立するのは大変そうだ。

僕は夜中に起きれるように枕に呪文をかけ、目を閉じた。




翌朝、僕は少し興奮しながら大広間に行った。

ケルヴィンとマイクが何か話しかけても上の空だ。

教員席でダンブルドアを探す。

すぐに彼は見付かった。

が、悪い事に、アンブリッジもいた。

あの女に見付からずに、ダンブルドアに報告したい事がある、と言うのに。

ルーピンがいれば彼に話せたのに、と、もどかしく感じるが、今はダンブルドアを見続ける事しか出来ない。

僕の祈りが通じたのか、ダンブルドアはマクゴナガルとの会話の途中で、僕の視線に気付いたようだった。

が、何のリアクションもない。

通じなかったらしい。

教員席から目を離して、ママレードを塗ったトーストを口に入れる。

校長室に行く事は絶対にダメだ。

ふくろうに手紙を持たせる事も考えたが、それだと彼の考えを聞く事が出来ない。

僕はどうにかして彼と話しが出来ないものか考えながら、朝食を食べ終えた。


「おい、さっきから変だぞ?」


痺れを切らしたらしいケルヴィンが僕の肩を掴む。

大広間から魔法薬学教室に向かっている最中の事だった。


「そうかな?」


僕は考えを中断された事に少し腹を立てながら返事をした。


「そうだよ。お前、バカなヤツらの話に腹を立ててんのか?」

「え?」


ケルヴィンの言葉に首をかしげる。

”バカなヤツら”が何を言っていたんだろう?

僕はケルヴィンの顔を見た。

ケルヴィンは僕の態度で、何も気付いてない事が分かったのか、頭を振った。


「気付いてないならいい。気にしない事が一番だ」


どうやら教えてくれる気はないらしい。

僕はマイクを見た。


「マイク、どんな話なんだい?」


マイクはちょっと躊躇った後、足を止め、周りを見て人がいない事を確認して口を開いた。


「何て言うか………君に同情してるんだ……ほら…………おじさんが仕事を辞めたり……スノウに騙されてたって……」


僕は、あぁ、と納得した。


「それか。別に気にしてないよ」


ホグワーツに来る前から想像していた事だ。


「じゃぁ、スノウの悪口は?」


マイクは腹立たしそうに言葉を続ける。


「僕はムカつくよ。僕の友達の事を悪く言うなんて」

「……”悪の手先”、”悪魔の様にずる賢い”、”善良な人々を誑かした”……他に何があったかな?」


僕は夏の間、新聞に書いてあった事を指折りながら口にした。

”バカなヤツら”が言ってたのもこれとそう変わらないだろう。

バカなんだから。


「セドリック!」


ケルヴィンが数えていた僕の手を叩いた。

そのまま襟首を掴まれ壁に押し付けられる。


「何言ってんだ?お前まで!」


どうやら彼も相当イラついていたらしい。

僕は両手を上げた。


「止めてくれよ、ケルヴィン。僕はスノウに関して仕入れた知識を披露しだけだ。僕自身が思っている事を口にした訳じゃない」

「そうだよ。その手を離して」


マイクもケルヴィンの剣幕に驚いている。

ケルヴィンは頭を振った。


「それでも、お前は言うな。お前が別の事を思っていたとしても、人は他人の心の中は覗けない。お前の口から出た言葉が全てなんだ。

”バカなヤツら”はお前の言葉を魔法界中に広める。それをスノウが聞いたらどう思うか考えてみろ。分かったか?」


僕は頷いた。


「分かってる。少し……軽率だった。これからは気を付けるよ」


ケルヴィンは納得したのか、僕の襟元から手を離した。


「ほう……今年の首席は自ら騒ぎを起こす事を望んでいるとみえる」


僕達は揃って声の方を向いた。

少し離れた所にスネイプが立っていた。


「ぃえ……これは……」


ケルヴィンが言い訳しようと口を開いた。

が、何も出て来なかったようだ。


「僕が悪いんです、先生」


僕はケルヴィンの前に立ってスネイプに対峙した。

スネイプは眉根を顰めた。


「アンブリッジの事をガマガエルの様だ、と言った僕をケルヴィンは咎めていたんです」


スネイプの口角がほんの少し上がった様に見えた。

………機嫌は悪くないらしい。

スネイプのちょっとした表情の変化に気付けるようになっている自分に驚く。

ましろとアイリスのおかげだな。


「そうかね……ハッフルパフ、2点減点。ディゴリーは授業の後残りたまえ。先生の悪口など二度と口にしない様に反省して貰う」

「はい、先生」


僕達は出来る限り急ぎ足で魔法薬学教室に向かった。

2時限続きの授業が終わった後、僕はスネイプの机の前に行った。

スネイプは他のみんながいなくなるのを待ってから口を開いた。


「校長に何か用があると聞いたのだが?」

「え?」


僕は意味が分からなかった。

何か罰則を言われるのだと思っていた。

スネイプは眉根に皺を寄せてもう一度言った。


「校長に何か言いたい事があるのだろう?話しを聞いて来るように、と言われたのだ。校長は君に会う時間を作れない」


僕はやっと意味が呑み込めて、ポケットの中から羊皮紙を数枚出した。


「これ、ましろからの紙飛行機です。紙飛行機で僕達連絡を取り合っていて……「知っている」昨日の夜の返事に変化が」


スネイプは僕が差し出した羊皮紙を取ろうとして、手を止めた。


「先生になら読まれても構いません」


僕の言葉にスネイプは羊皮紙を手に取った。


「質問の所なんです。今までは全部”YES”にチェックが入っていたのに、昨日のは一つだけ”NO”にチェックが。

杖を手に入れたって事ですよね?何故手に入れられたんでしょう?先生はどう思いますか?」


僕の質問に答えることなく、スネイプは全ての手紙に目を通した後、僕に返した。


「ディゴリー、一つ質問だ。答え難くければ答えなくても良い」


スネイプは僕を見た。

僕は頷いた。


「その最後の手紙にある夢の事だが………何故夢だと?」

「朝起きてベッドにいなかったからです」

「だが、彼女は自由に移動する術を持っている。彼女自身がこっそり来たとは思わないかね?」


僕は頭を振った。


「確かにとてもリアルで、ましろを探した事は認めます。ですが、彼女は絶対に着るはずのない服を着ていました。

彼女の嫌いなレースの付いた服を。それに……指にタトゥーをしていました。」

「タトゥー?どのような?」


僕は左手を出した。


「中指のここの所に小さなバラの花のタトゥーです。ましろは”魔除けだ”と言っていました。

僕は……ましろが傷付けられなければいい、とずっと思っていたので、そんな夢を見たんだと思いました」


例え小さな刺青でも、とても嫌な気分になった。

それがバラの花で、魔除けの効果を持つにしても、だ。

スネイプは頷いて立ち上がった。


「続きは放課後だ。研究室に来たまえ。友人には罰則を受ける、とでも言えばいい」


僕は頷いて手紙をポケットに入れ、教室を出た。




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