Loving You 3

□ホグワーツ
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大広間での夕食は、残念ながら楽しいものではなかった。

ケルヴィンとマイクがいなかったから、じゃない。

大広間中がざわめいていたからだ。

ポッターが早速ガマガエルと怒鳴り合いをやらかしたらしい。

そんな暇があったら、さっさとヴォルデモートの所に行けばいいのに。


「スノウ・ディゴリーは連れ去られたんだって言ってる………」

「『例のあの人』と決闘したって言ってる………」

「まさか………」

「誰がそんな話に騙されると思ってるんだ?」

「ま〜〜ったくだ………」

「スノウは自分から行ったんだろう?」

「し〜〜っ!セドリック・ディゴリーがそこにいるじゃないか………」

「可哀想に………」

「可愛い顔してみんなを騙すなんて………」


僕は自分に耳塞ぎ呪文をかけて食事を終えた。

休み前はヴォルデモートの復活を信じていた子も、夏休みの間に洗脳されてしまったらしい。

大広間を出て魔法を解き、部屋に戻る。


「やっと戻ってきた。大広間に行かない?」


マイクがお腹をさすりながら声をかけて来た。


「あ〜〜ごめん。先に食べて来たんだ。遅くなったから、もう食べに行っただろうって思って」

「そうか。スネイプの研究室から帰り道だもんな。じゃ、俺達行ってくるわ」


ケルヴィンが気にすんな、と肩を叩いて部屋を出て行った。

マイクも後を追って出て行く。

僕は一人部屋に残って、初めて息が出来た様な気がした。

ベッドに寝転がり、深呼吸する。

疲れた………

まるで一日中、スニッチを追いかけていたみたいだ。

僕はポケットに入れっぱなしだった羊皮紙を出して眺めた。


「ましろ………」


夢でいい。

君に会いたい。

僕は手紙に目を走らせる。

と、ある事に気付いた。


「これ………杖を手に入れたのは一昨日の夜?」


質問の欄。

”杖は持ってないのかい?”の所のチェックの場所が違う。

見落としていた!

僕はこの手紙を受け取った時の事を思い出す。

確か……寝ていた。

ましろの返事はいつもすぐ来ない。

起きて待っていようとするが、大抵寝てしまう。

紙飛行機に頭を突かれて、手に取って読もうとして………

そばにましろがいる事に気付いたんだ!

だからその時、手紙は読まなかった。

読んだのは昨日の朝。

ましろを探したり、ホグワーツに行く用意をしたり、父さん達と少し話したりで、ざっと目を通しただけだった。

正確には、”ごめんね”と書いてあるのを見ただけ。

質問のチェックを確認した記憶はない。

スネイプはこれに気付いた?

僕は授業が終わった後の、ほんの少しの会話を思い返す。

………間違いない。

スネイプは気付いたんだ。

それで僕に夢の事を聞いた。

ダンブルドアが夢の事を知りたがった。

きっとそうだ。

ましろは僕に会いに来た。

夢なんかじゃなく、本当に。

杖を手に入れた事で……その理由はまだ分からないけど……ましろは抜けだしたんだ。

”術”は杖が無くても出来る。

だからいつでも隙を見て抜け出せたはず。

でも僕に”夢だ”と思わせるには……杖があった方が便利だろう。

来た時と同じ状態に戻すのに、杖は必要だ。

実際に、愛し合った痕跡は全くなかった。

僕は羊皮紙を抱きしめた。

なんて酷い事をするんだい?ましろ。

一言言ってくれれば良いのに。

君と会った事を、君に触れた事を、僕は夢だと思っていたよ。

君が言った事と言ったら、ごめん、と、愛してる、と、眠くなった、と………”魔除け”だ!!

僕は飛び起きた。

あのタトゥーはヴォルデモートに付けられたんじゃないのか?

僕は心臓がドキドキしてきた。

スネイプは言っていた。

彼の腕にある”焼印”は死喰い人の印だと。

だったら、ましろに付けた印は?

あの意味は………ヴォルデモートの孫だ、という印?

ましろが”ましろ・こう”だという印?

それとも他に何か意味があるのか?

分からない。

ただ………

僕は手紙を握りしめ、部屋を飛び出した。

急いで談話室を抜け、廊下や階段を走り、スネイプの研究室のドアをノックした。

何度もドアをノックし続ける。

が、中からは何の返事もない。

通りかかったスリザリン生が訝しげな表情で僕を見た。

僕は階段を駆け上り、大広間に行った。

入口から教員席を見たが、いるのはグランプリーとフリットウィックだけ。

食事でもないのか。

こんな時間から休むとは思わないが、他に何処にいるのか見当もつかない。

僕は大広間を離れ、寮に向かう。

もう少しして、もう一度研究室に行ってみよう。

僕は歩きながら思い付いた事を吟味した。

ましろの印は、スネイプの腕にあった印を思い出させた。

スネイプは”死喰い人”だ。

彼ならましろの居場所を知っているかもしれない。

いや、アイリスも知らなかった位だから、実際は知らないかもしれない。

でも、今後知る機会がやって来るかも知れない。

だったら!

だったら僕も死喰い人になればいい。

少なくとも今よりは、ましろに会える可能性が高くなる気がする。

スネイプは僕をヴォルデモートの元に連れて行ってくれないだろうか?

その考えはとても魅力的で、簡単なように思えた。

談話室に入り、部屋に戻る。

手紙をトランクの一番奥にしまいこみ、また部屋を出ようとした所で、ケルヴィンとマイクが帰って来た。


「ぁ、おかえり」

「セドリック?今から何処に行くつもりだ?」

「あ〜〜ぃや、喉が渇いたから……」


僕は誤魔化した。

自分の考えを二人に知られたくなかったから。

ケルヴィンの後ろにいたマイクが声を上げる。


「じゃ、僕のソーダを飲んだらいいよ。僕、課題をやる時に必要かなぁって思って持って来たんだ」

「あぁ、うん………そう……ありがとう、マイク」


僕はマイクが差し出したソーダの瓶を受け取った。


「でも、僕が貰ったら君の分がなくなるだろう?だからこれは君が持っていた方が良い。僕は取りに行ってくるよ」


受け取ったソーダの瓶をマイクに差し出す。


「良いから貰っとけよ。飲みたくなったら取りに行けばいい事だ」


ケルヴィンが僕の差し出した瓶を押し戻した。


「でも……」

「良いんだって、セドリック。ケルヴィンの言う通りさ」


部屋を出る口実がなくなった。

消灯時間までまだ時間はある。

それまでに何か機会を見つけなければ。

僕はもう一度マイクにお礼を言って、飲みたくもなかったソーダの瓶に口を付けた。

二人はめいめいの机に行かず、僕を見ている。


「どうしたんだい?課題をやるんじゃない「セドリック、お前、座れ」なんだい?」


ケルヴィンは僕の椅子を指した。

とても苛立っているように見える。


「良いから座れ!」


訳が分からずマイクを見るが、彼は黙って僕の椅子を机から引き出した。

しょうがなく、僕は椅子に座った。



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