Come!
□試す
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リントとセスも一緒に、スピナーズエンドへ。
昨日のうちにセブが食品の手配も済ませてくれていたので、快適な生活の始まりだった。
早速『脱狼薬』の試作に取り掛かる。
“フロプシス”は精製されているので取り掛かりは早かったが、何しろ出来た物が………まずそう。
色は青汁に泥水混ぜたみたいだし、匂いも青臭い。
極め付けに、うっすら煙が上がっている。
理論上はこれをゴブレット一杯、一週間飲めばいいんだけど、とても飲ませる気にはなれない。
「これなら今の薬の方がマシのような気がする」
試しに指にちょっとだけ付けて舐めたら、吐き気がした。
「おえっ!これは、ナシだな」
鍋を放っといて、レポートを見直す。
何処かで間違えたんだと思いたい。
「………よし、間違えてない!………攪拌時間を変えてみよう」
その後、攪拌時間や回数、加熱温度、冷却時間と色々試したが、結局出来上がるのは最初のものとほとんど同じ。
「………“フロプシス”が悪いのかな」
かなり自信をなくした頃にセブが入って来た。
「リントが心配している。そろそろ夕食の………ましろ………これは?」
あれ?またお昼だけでなくお茶も抜いてたのか。
研究室にはリントもセスも立ち入り禁止だし、セブはダイアゴンに行くと言ってた。
ノックくらいじゃ気付かないくらい集中してたって事か。
「あぁ、試作品。どうやってもそれが出来ちゃうの。まずそうでしょ?まずいのよ」
鍋3つを使って一日がかりで10パターン。
目鼻が付くまで時間がかかりそうだ。
「いや、これは、いいんじゃないのか?」
レポートと薬を見比べながら、セブは一つ一つ確認していく。
「ふむ、最初のものが一番良さそうですな。煙が出ただろう?あれが出ているうちに飲めば、変身が押えられるはずだ」
「いやっ、ほんとにまずかったの。おえってなったもん」
「………………飲んだのか?」
「舐めただけ。ちょっと指につけてね」
「………全部舐めたのか?ここにある10種類全部?」
「うん。今までのも全部味見してたよ。………しないの?」
セブは頭を抱えて、しゃがみ込んだ。
「何?!セブ!どうしたの?頭痛いの?」
慌てて近寄ると、ガシッと腕をつかまれ、床に正座させられた。
「ましろ、よ〜〜〜〜〜っく聞け。『脱狼薬』は通常の人間には使わない材料も入っている。
例え少量であっても、摂取する事は危険なのだ。これからは味見などするな」
噛んで含めるように言われる。
今まで大丈夫だったのになぁ。
「いいな?分かったな?」
返事をしないので、再度確認される。
「分かったけど………まずいのを人に勧めるのは、できない」
「まず効果があれば良い。薬とは、そういうものだ」
ふ〜ん、こんな考えの人が多いから魔法薬ってまずいんだ。
「薬って、飲んでもらわない事には意味無いでしょ?必ず飲まなきゃいけないなら飲みやすい方が良いに決まってるじゃない」
「それでも!『脱狼薬』は味見禁止!」
何よ!通常の人は使わないようなの使わないようにするから良いもん!
ん?通常の人?
「セブ、私、通常の人じゃないよ。ほら、どっちかって言うと、異常………」
あ、自分で言ってて、ちょっとヘコんだ。
「ましろは異常ではない。普通の人間だ。だから味見はするな。分かったか?」
落ち込み始めた私の頭をぽんぽん叩き、立ち上がらせる。
「とにかく、先に食事にしよう。空腹だとイライラして敵わん」
頷いてキッチンへ行くと、リントが仁王立ちで、待っていた。
「セブルス様。私は、ましろ様を連れてきていただくようお願いしました。が、50分も掛かるなら、そう仰ってください」
うっ!怒ってらっしゃる。
「それは、悪かった」
「リント、ごめんね。私が引き止めてたの」
「ましろ様も。お昼もお茶も召し上がらないなんて、一体何をお考えですか?」
そこからリントに30分静かに怒られて、明日からはきちんと食事をとると約束して、夕食が始まった。
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